応用情報技術者 2019年 秋期 午前2 問62
問題文
TCOの算定に当たって、適切なものはどれか。
選択肢
ア:エンドユーザコンピューティングにおける利用部門の運用費用は考慮しない。
イ:システム監査における監査対象データの収集費用や管理費用は考慮しない。
ウ:システム障害の発生などによって、その障害とは直接関係のない仕入先企業が被るおそれがある、将来的な損失額も考慮する。
エ:利用部門におけるシステム利用に起因する、埋没原価などの見えない費用も考慮する。(正解)
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TCO算定の範囲【午前2解説】
正解の理由
TCO(Total Cost of Ownership)は、取得費用だけでなく、導入後の運用・保守・廃棄に至るまでの「見えにくい費用」も含めて所有期間全体の費用を把握する考え方です。利用部門の運用費用、監査に伴うデータ収集や管理の費用、トレーニングやサポート、ダウンタイムによる生産性低下などはTCOの評価対象になります。したがって、埋没原価やその他の「見えない費用」も評価対象に含める点を示す エ が適切です。
ただし「埋没原価(sunk cost)」については注意が必要です。過去に既に発生し回収不能な費用は、将来の意思決定の際には通常は無視すべき(意思決定のための追加コスト比較に不要)ですが、ある資産の所有期間全体の実績コストを報告する目的でのTCO算定では、過去発生分も含めて「総コスト」を示す場合があります。本問の文脈では「見えない費用も考慮する」という観点が問われており、隠れコストを含めることを正しく示した エ が正解です。
解法ステップ
- TCOの定義を思い出す:購入費用だけでなく、運用・保守・教育・ダウンタイム・廃棄など所有期間に発生する費用を含めること。
- 各選択肢が「所有期間の総コスト」かどうかを確認する。運用費用や管理費用は明らかにTCOに含む。
- 「将来的な損失」「埋没原価」の扱いについて基準を適用する:
- 原因と費用が所有・運用に直接関連し、合理的に見積もれるものはTCOに含める。
- 因果関係が薄く推測的・過度に不確実な将来損失は除外する。
- 埋没原価は「既に発生した回収不能費用」という性質上、意思決定比較では除外するが、所有期間の総コスト把握(報告)では含め得る。
- 上記基準に照らして最も適切な選択肢を選ぶ(本問では「見えない費用も考慮する」を示す エ)。
選択肢別の誤答解説
-
ア: エンドユーザコンピューティングにおける利用部門の運用費用は考慮しない。
誤り。利用部門の運用費用(人的コスト、トレーニング、サポート負荷など)はTCOで重要な構成要素です。これを除外すると実態の低評価につながります。 -
イ: システム監査における監査対象データの収集費用や管理費用は考慮しない。
誤り。監査対応に伴う工数やデータ管理の追加コストも運用コストとしてTCOに含めるべきです。 -
ウ: システム障害の発生などによって、その障害とは直接関係のない仕入先企業が被るおそれがある、将来的な損失額も考慮する。
誤り。将来的損失を含めるかどうかは「因果関係」と「見積可能性」で判断します。障害と直接関係がない第三者の将来損失は因果関係が弱く、金額が推測的であるため通常のTCO算定に含めるべきではありません(評価の目的により例外あり)。 -
エ: 利用部門におけるシステム利用に起因する、埋没原価などの見えない費用も考慮する。
正答。TCOは「見えない費用(間接費、機会損失、サポート工数、ダウンタイム等)」を含めて所有期間全体のコストを把握する考え方を示します。ここでの「埋没原価」の扱いは下記の補足参照。
よくある誤解
-
埋没原価は常にTCOに入れるべき、という誤解
- 埋没原価は既に発生し回収不能な費用です。総所有コストを把握するために「実際に発生した全コスト」として報告に含めることはありますが、将来の選択肢を比較する意思決定では通常除外します。目的(報告か意思決定か)を明確にして扱いを分けてください。
-
将来のあらゆる損失を無条件に含めるべき、という誤解
- TCOに含める将来費用は「システム所有・運用に直接起因し」「合理的に見積可能」なものに限定します。関係が薄く不確かな将来損失を無制限に含めると過大評価や恣意的評価につながります。
-
間接費や機会損失は無視してよい、という誤解
- 間接費(管理工数、教育時間、運用負荷)や機会損失(本来行えた業務の逸失)はTCOで重要な隠れコストです。可能な限り定量化して評価に組み込みます。
補足コラム
実務でTCOを算定する際のポイント
- 範囲(スコープ)を明確にする:評価対象資産、期間(例:5年)、含める費目(取得、運用、保守、エネルギー、廃棄、間接費、機会費用)を事前に定義します。
- 将来費用は割引・リスク調整する:長期にわたる費用は時間価値を反映して現在価値に直す(NPV)。不確実性が高い項目はレンジ見積もりやシナリオ分析を行います。
- ダウンタイムコストの概算式(例):
ダウンタイム損失 = 1時間当たりの売上(または生産価値) × ダウン時間(時間) + 復旧費用 - 定量化困難な項目(ブランド毀損、顧客信頼の低下等)は定性的リスクとして添付し、必要に応じて感度分析で影響度を示します。
FAQ
Q1: 機会損失はTCOに含めるべきですか?
A1: 原則として含めます。特に業務効率や生産性が低下することにより生まれる損失は、合理的に推定可能であればTCOに組み込みます。ただし推定方法と前提を明確にしてください。
A1: 原則として含めます。特に業務効率や生産性が低下することにより生まれる損失は、合理的に推定可能であればTCOに組み込みます。ただし推定方法と前提を明確にしてください。
Q2: 埋没原価を計算に入れてはいけない場合は?
A2: 将来の投資判断や複数案の比較では、既に発生した埋没原価は意思決定に影響を与えないため除外します。報告や事後分析で「所有期間中にどれだけ費用をかけたか」を示す場合は含めます。
A2: 将来の投資判断や複数案の比較では、既に発生した埋没原価は意思決定に影響を与えないため除外します。報告や事後分析で「所有期間中にどれだけ費用をかけたか」を示す場合は含めます。
Q3: 取引先の将来損失(第三者の被害)はTCOに含めるか?
A3: 原則として含めません。因果関係が薄く不確実性が高いためです。ただし契約上の賠償責任や明確な因果がある場合は、見積もり可能なら含めることがあります。
A3: 原則として含めません。因果関係が薄く不確実性が高いためです。ただし契約上の賠償責任や明確な因果がある場合は、見積もり可能なら含めることがあります。
関連キーワード: TCO、埋没原価、機会費用、間接費、運用コスト、ダウンタイム、総所有コスト

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