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応用情報技術者 2023年 春期 午後10


クラウドサービスのサービス可用性管理に関する次の記述を読んで、設問に答えよ。

 L社は、大手の自動車部品製造販売会社である。2023年4月現在、全国に八つの製造拠点をもち、L社の製造部は、昼勤と夜勤の2交替制で部品を製造している。L社の経理部は、基本的に昼勤で経理業務を行っている。L社のシステム部では、基幹系業務システムを、L社本社の設備を使って、オンプレミスで運用している。また、会計業務システムは、2023年1月に、オンプレミスでの運用からクラウド事業者M社の提供するSaaS(以下、Sサービスという)に移行した。L社の現在の業務システムの概要を表1に示す。
応用情報技術者試験(令和5年度 午後 問10 表01)
〔L社のITサービスの現状〕  システム部は、L社内の利用者を対象に、業務システムをITサービスとして提供し、サービス可用性やサービス継続性を管理している。  システム部では、ITILを参考にして、サービス可用性と異なる3種の特性及び指標を表2のとおり定めている。
応用情報技術者試験(令和5年度 午後 問10 表02)
 基幹系業務の ITサービスは、生産管理など事業が成功を収めるために不可欠な重要基幹機能を支援しており、高可用性の確保が必要である。基幹系業務システムでは、L社本社建屋内にシステムを 2 系統用意してあり、本番系システムのサーバの故障や定期保守などの場合は、予備系のサーバに切り替えて ITサービスの提供を継続できるシステム構成を採っている。また、ストレージに保存されているユーザーデータファイルがマルウェアによって破壊されるリスクに備え、定期的にユーザーデータファイルのフルバックアップを磁気テープに取得している。バックアップを取得する磁気テープは 2 組で、1 組は本社建屋内に保存し、もう 1 組は災害に対する脆弱性を考える必要があるので、遠隔地に保管している。   〔Sサービスのサービス可用性〕  システム部の X氏は、会計系業務システムに S サービスを利用する検討を行った際、M 社のサービスカタログを基にサービス可用性に関する調査を行い、その後、L社と M 社との間で SLA に合意し、2023 年 1 月から S サービスの利用を開始した。L社が実内している S サービスのサービスカタログ〔抜粋〕を表3に、L社と M 社との間で合意した SLA のサービスレベル目標を表4に示す。
応用情報技術者試験(令和5年度 午後 問10 表03)
応用情報技術者試験(令和5年度 午後 問10 表04)
 2023年1月は、S サービスでインシデントが発生してサービス停止した日が 3 日あったが、サービス停止の時間帯は 3 日とも表4のサービス時間の外だった。よって、表4のサービス稼働率は 100% である。仮に、サービス停止の時間帯が 3 日とも表4のサービス時間の内の場合、サービス停止の月間合計時間が b 分以下であれば、表4のサービス稼働率のサービスレベル目標を達成する。ここで、1 月の L社の営業日の日数を 30 とする。  3 月は、表4のサービス時間の内に S サービスでインシデントが発生した日が 1 日あった。復旧作業に時間が掛かったので、表4のサービス時間の内で 90 分間サービス停止した。3 月の L社の営業日の日数を 30 とすると、サービス稼働率は 99.75% となり、3 月も表4のサービスレベル目標を達成した。しかし、このインシデントは月末繁忙期の日時に発生したので、L社の取引先への支払業務に支障を来した。  X氏は、サービス停止しないことはもちろんだが、サービス停止した場合に迅速に対応して回復させることも重要だと考えた。そこで、X氏は L社の責に帰するインシデントが発生してサービス停止したときの①サービスレベル項目を表4に追加できないか、h 社と調整することにした。  また、今後、経理部では、勤務時間を製造部に合わせて、文書例で夜動を行う勤務体制を採って経理業務を行うことで、業務のスピードアップを図ることを計画している。その場合、会計業務システムのサービス時間を見直す必要がある。そこで、X氏は、表4のサービスレベル目標の見直しが必要と考え、表3のサービスカタログを念頭に、②経理部との調整を開始することにした。   〔基幹系業務システムのクラウドサービス移行〕  2023 年 1 月に、L社は BCP の検討を開始し、システム部は地震が発生して基幹系業務システムが被災した場合でもサービスを継続できるようにする対策が必要となった。X氏が担当になって、クラウドサービスを利用して BCP を実現する検討を開始した。  X氏は、まず M 社が提供するパブリッククラウドの IaaS (以下、I サービスという) を調査した。I サービスのサービスカタログでは、サービスレベル項目としてサービス時間及びサービス稼働率の二つが挙げられていて、サービスレベル目標は、それぞれ 24 時間 365 日及び月間目標値 99.99%以上になっていた。I サービスでは、物理サーバ、ストレージシステム、ネットワーク機器などの IT基盤のコンポーネント(以下、物理基盤という) は、それぞれが冗長化されて可用性の対策が採られている。  また、ハイパーバイザー型の仮想化ソフト (以下、仮想化基盤という) を使って、1台の物理サーバで複数の仮想マシン環境を実現している。  次に、X氏は、Iサービスを利用した災害対策サービスについて、M社に確認した。災害対策サービスの概要は次のとおりである。  ・M社のデータセンター (DC) は、同時に被災しないように東日本と西日本に一つずつある。通常時は、L社向けのIサービスは東日本のDCでサービスを運営する。東日本が被災して東日本のDCが使用できなくなった場合は、西日本のDCでサービスが継続される。  ・西日本のDCのIサービスにはユーザーデータファイルを保存し、東日本のDCのIサービスのユーザーデータファイルと常時同期させる。東日本のDCの仮想マシン環境のシステムイメージは、システム変更の都度、西日本のDCにバックアップを保管しておく。    M社の説明を受け、X氏は次のように考えた。  ・地震や台風といった広範囲に影響を及ぼす自然災害に対して有効である。  ・災害対策だけでなく、物理サーバに機器障害が発生した場合でも業務を継続できる。  ・西日本のDCのIサービスのユーザーデータファイルは、東日本のDCのIサービスのユーザーデータファイルと常時同期しているので、現在行っているユーザーデータファイルのバックアップの遠隔保管を廃止できる。  X氏は、上司にM社の災害対策サービスを採用することで効果的にサービス可用性を高められる旨を報告した。しかし、上司から、③X氏の考えの中には見直すべき点があると指摘されたので、X氏は修正した。  さらに、上司はX氏に、M社に一任せずに、M社と協議して実質的な改善を継続していくことが重要だと話した。そこで、X氏は、サービス可用性管理として、サービスカタログに記載されているサービスレベル項目のほかに、④可用性に関するKPIを設定することにした。また、基幹業務システムの災害対策を実現するに当たって、コストの予算化が必要になる。X氏は、災害時のサービス可用性確保の観点でサービス継続性を確保するコストは必要だが、コストの上昇を抑えるために災害時に基幹業務システムを一部縮退できないか検討した。そして、事業の視点から捉えた機能ごとの⑤判断基準に基づいて継続する機能を決める必要があると考えた。

設問1〔L社のITサービスの現状〕について答えよ。

(1)表2中のMTBF及びMTRSについて、適切なものを解答群の中から選び、記号で答えよ。
解答群  ア:MTBFの値は大きい方が、MTRSの値は小さい方が望ましい。  イ:MTBFの値は大きい方が、MTRSの値も大きい方が望ましい。  ウ:MTBFの値は小さい方が、MTRSの値も大きい方が望ましい。  エ:MTBFの値は小さい方が、MTRSの値も小さい方が望ましい。

模範解答

解説

解答の論理構成

  1. 【問題文】の表2には、指標として
    • 「MTBF」(Mean Time Between Failures:平均故障間隔)
    • 「MTRS」(Mean Time to Restore Service:平均修復時間)
      が示されています。
  2. MTBFは「ITサービスを中断なしに、合意された機能を実行できる能力」を測る指標です。長く故障しないほどサービスは安定するため、値は“大きい方が望ましい”です。
  3. MTRSは「ITサービスに障害が発生した後、通常の稼働状態に戻す能力」を測る指標です。復旧に要する時間が短いほど利用者影響が小さいため、値は“小さい方が望ましい”です。
  4. よって「MTBFの値は大きい方が、MTRSの値は小さい方が望ましい」とする選択肢「ア」が正解となります。

誤りやすいポイント

  • MTBFとMTTR/MTRSを混同し、両方とも「短いほど良い」と誤解する。
  • MTBFを「平均故障時間」と読み違え、値が小さい方が安定すると勘違いする。
  • MTRSとダウンタイム全体を同義と考え、「長い保守時間=高品質」と思い込む。

FAQ

Q: MTBFとMTTRはどちらも可用性指標ですが、表2ではMTTRではなく「MTRS」となっています。違いはありますか?
A: MTTR (Mean Time To Repair) は機器を修理するのに要した平均時間を指すことが多いのに対し、MTRSは「サービスレベル」で見た復旧完了までの平均時間を指します。サービス再開に要する一連の時間を評価する点が重要です。
Q: 可用性を高めるにはMTBFを延ばす/MTRSを短縮する以外に何が有効ですか?
A: 冗長構成やフェイルオーバ、自動復旧スクリプト、部品のホットスワップ対応などが挙げられます。MTBFとMTRSの両面から施策を組み合わせることで、総合的な可用性を向上できます。
Q: MTBFが十分に長いシステムでもMTRS改善は必要でしょうか?
A: はい。稀にしか故障しなくても、復旧が長引けば利用者は大きな影響を受けます。高可用性には両指標のバランスが必須です。

関連キーワード: MTBF, MTRS, 可用性, 保守性

設問1〔L社のITサービスの現状〕について答えよ。

(2)表2中のaに入れる適切な字句を、5字以内で答えよ。

模範解答

a:信頼

解説

解答の論理構成

  1. 表2には三つの特性が並びます。
    • 「可用性」―指標は「サービス稼働率」
    • a性」―指標は「MTBF」
    • 「保守性」―指標は「MTRS」
  2. ITIL では、可用性 (Availability) を構成する代表的な要素として
    • Reliability(サービスを中断なく提供できる能力)
    • Maintainability(復旧のしやすさ)
    を定義しています。
  3. 表2の説明「ITサービスを中断なしに、合意された機能を実行できる能力」は ITIL の Reliability の説明と一致します。
  4. Reliability を日本語訳すると通常「信頼性」です。
    • 5字以内という設問条件も満たします。
  5. よって a に入る語は「信頼」となります。

誤りやすいポイント

  • 「可用性」と「信頼性」を同一視してしまう
    (指標が異なるので混同は禁物です)。
  • 「MTBF」を「保守性」と結び付けてしまう
    (MTBF は故障間隔=信頼性の指標、MTRS が保守性の指標)。
  • 「耐障害性」「冗長性」など類似語を当てはめる
    (どちらも MTBF の直接指標ではありません)。

FAQ

Q: 「信頼性」と「耐障害性」は同じ意味ですか?
A: いいえ。信頼性は中断なく機能を提供できる能力全般を示し、耐障害性は障害が起きても影響を最小化する設計要素を指します。
Q: MTBF が長ければ保守性も高いと考えてよいですか?
A: 必ずしもそうではありません。MTBF は故障までの平均時間で信頼性の指標、MTRS が短いことが保守性の高さを示します。
Q: ITIL では可用性管理と信頼性管理は分かれていますか?
A: 可用性管理の配下に信頼性 (Reliability) が含まれ、全体としてサービスの継続提供を評価・改善します。

関連キーワード: 可用性管理, 信頼性, MTBF, MTRS

設問2〔Sサービスのサービスレベル〕について答えよ。

(1)本文中のbに入れる適切な数値を答えよ。なお、計算結果で小数が発生する場合、答えは小数第1位を四捨五入して整数で求めよ。

模範解答

b:180

解説

解答の論理構成

  1. サービス稼働率計算式の確認
    表3には次の式が示されています。
    ――「(サービス時間 - サービス停止時間¹) ÷ サービス時間 × 100(%)」
    これが可用性(サービス稼働率)の算出公式です。
  2. 目標可用性の把握
    表4には「月間目標値99.5%以上」とあります。したがって、ダウンタイムはサービス時間の 以内に収める必要があります。
  3. 1 か月のサービス時間を計算
    同じく表4よりサービス時間は
    ――「L社の営業日の午前6時〜翌日午前2時(1日20時間)」
    1 月の営業日数は本文で「1 月の L 社の営業日の日数を 30」と明示されています。
    よって総サービス時間は

    分単位に直すと
    です。
  4. 許容される停止時間を算出
    可用性 を維持するために許される停止時間 (Downtime) は
  5. 結論
    b に入る数値は 180 となります。

誤りやすいポイント

  • 「24時間365日」と混同して 1 か月 720 時間で計算してしまう。
  • 日数 31 日で計算、あるいは営業日以外も含めてしまう。
  • と読み違え、計算誤差を生む。
  • 分換算を忘れ、答えを「3 時間」と書いて減点される。

FAQ

Q: 目標可用性が 99.9% などに変わったらどう計算しますか?
A: 同じ式で を掛けるだけです。母数(サービス時間)は必ず問題文の条件に従って算出してください。
Q: 「計画停止時間」があれば計算に含めますか?
A: 表3の式にもある通り、計画停止時間はあらかじめサービス時間から除外されるため、稼働率の分母・分子には含めません。
Q: 営業日が途中で変動する場合はどうしますか?
A: その月の実績営業日数を用いて総サービス時間を求めるのが原則です。問題で数値が与えられていないときは、補足資料や運用実績から取得します。

関連キーワード: サービス稼働率, SLA, 可用性計算, ダウンタイム, KPI

設問2〔Sサービスのサービスレベル〕について答えよ。

(2)本文中の下線①について、X氏は、L社の責に帰するインシデントが発生してサービス停止したときのサービスレベル項目を追加することにした。追加するサービスレベル項目の内容を20字以内で答えよ。

模範解答

サービス回復までの最大時間

解説

解答の論理構成

  1. 既存の SLA(表4)には
    「サービス時間」「サービス稼働率」「計画停止時間」の3項目しかなく、障害発生後にどれだけ早く復旧できるかを示す項目がない。
    ――【問題文】「X 氏は、サービス停止しないことはもちろんだが、サービス停止した場合に迅速に対応して回復させることも重要だと考えた。」
  2. ITIL では障害後の復旧能力を “保守性” と呼び、指標に「MTRS」を用いる。
    ――【問題文】表2「保守性…指標 MTRS」
  3. SLA に復旧時間を組み込む場合、MTRS をベースに「サービス回復までの最大時間」など、上限時間を定義するのが一般的。
  4. 以上より、X 氏が追加を検討するサービスレベル項目は
    「サービス回復までの最大時間」となる。

誤りやすいポイント

  • 稼働率を高める=可用性対策完了と早合点し、復旧時間(保守性)を軽視しがち。
  • MTBF と MTRS を混同し、「平均故障間隔」を追加項目にしてしまう。
  • 「インシデント対応時間」「障害検知時間」など似た用語を選び、SLA で求められる“回復完了まで”を定義し忘れる。

FAQ

Q: 稼働率と回復時間、どちらを優先すべきですか?
A: 事業上の重要度によります。高可用性が必須でも、障害ゼロは不可能です。停止した際に迅速に回復できることも同じくらい重要なので、両方を指標化しバランスを取る必要があります。
Q: MTRS をそのまま SLA に入れてはいけませんか?
A: MTRS は“平均”値なので、利用部門は最大許容時間を把握しにくい場合があります。SLA では「サービス回復までの最大時間」といった明確な上限を定義するほうが実務的です。
Q: 障害原因が M 社側だった場合も同じ項目を適用しますか?
A: 本設問は「L 社の責に帰するインシデント」を前提としています。原因が M 社側の場合は、別途 M 社の責任範囲で定義された SLA(稼働率等)が適用されるのが一般的です。

関連キーワード: 可用性, SLA, MTRS, MTBF, KPI

設問2〔Sサービスのサービスレベル〕について答えよ。

(3)本文中の下線②について、経理部と調整すべきことを、30字以内で答えよ。

模範解答

計画停止時間を考慮して経理部の勤務時間を定めること

解説

解答の論理構成

  • 【問題文】では、経理部が「勤務時間を製造部に合わせて…夜動を行う勤務体制」を検討しており、これに伴い「会計業務システムのサービス時間を見直す必要」があると記述されています。
  • 一方、Sサービスのサービスカタログ(表3)には「計画停止時間 毎月1回 午前2時〜午前5時」と明示されています。
  • しかし現在のSLA(表4)は「サービス時間 L社の営業日の午前6時〜翌日午前2時(1日20時間)」「計画停止時間 なし」としており、サービスカタログにある計画停止時間をSLA上は考慮していません。
  • 夜勤体制を組むと午前2時〜午前5時も経理業務の稼働時間帯に含まれる可能性があります。すると、クラウド事業者が実施する「毎月1回 午前2時〜午前5時」の計画停止が業務に直撃し、サービス停止リスクが高まります。
  • したがって、経理部とは「計画停止時間をどう扱うか」を調整し、勤務時間(=業務利用時間)を計画停止時間と重複させないよう決定する必要があります。
  • 以上より、②で調整すべき内容は「計画停止時間を考慮して経理部の勤務時間を定めること」となります。

誤りやすいポイント

  • サービスカタログ(表3)の内容をSLA(表4)が自動的に包含すると誤解し、計画停止時間の存在を見落とす。
  • 「サービス時間を延長する/24時間化する」という方向だけに着目し、計画停止時間との重複を検討し忘れる。
  • 計画停止時間を「インシデントによる停止」と同列に扱い、稼働率計算に含めてしまう。

FAQ

Q: 計画停止時間はサービス稼働率に影響しますか?
A: 表3の定義にあるとおり、計画停止時間はサービス稼働率計算の分母の「サービス時間」から除外されるため、稼働率には影響しません。ただし業務への影響がゼロになるわけではないため、利用部門との調整が必要です。
Q: 既存のSLA(表4)に計画停止時間が「なし」とあるのに、再調整が必要なのはなぜですか?
A: 経理部が夜勤を導入すると午前2時〜午前5時も利用時間帯になります。サービスカタログで定められた計画停止が業務時間帯と重複するため、SLAの「なし」を維持するか、勤務時間を変更するかを合意し直す必要があります。
Q: 事業者に計画停止時間の変更を要求することは可能ですか?
A: SaaSではサービス利用者が計画停止時間を任意に変更できないケースが多く、費用や他顧客への影響が大きくなります。まずは業務側の勤務時間調整を検討し、どうしても要件を満たせない場合に追加契約やオプションを協議するのが一般的です。

関連キーワード: SLA, サービス時間, 計画停止, サービス稼働率, 可用性管理

設問3〔基幹系業務システムのクラウドサービス移行〕について答えよ。

(1)ITサービスを使ってL社が基幹系業務システムを運用する場合に、M社が構築して管理する範囲として適切なものを、解答群の中からすべて選び、記号で答えよ。
解答群  ア:アプリケーションソフトウェア  イ:仮想化基盤  ウ:ゲストOS  エ:物理基盤  オ:ミドルウェア

模範解答

イ、エ

解説

解答の論理構成

  1. IaaS ではクラウド事業者が担う層とユーザが担う層が明確に分かれます。問題文には
     「I サービスでは、物理サーバ、ストレージシステム、ネットワーク機器などの IT基盤のコンポーネント(以下、物理基盤という) は、それぞれが冗長化されて…」
     「また、ハイパーバイザー型の仮想化ソフト (以下、仮想化基盤という) を使って…」
     とあり、M社がこれらを構築・維持していることが読み取れます。
  2. 一方で、ゲストOSより上位の層については記述がなく、通常のIaaSモデルでは利用企業(ここではL社)が用意・管理します。したがって
     ・「ウ:ゲストOS」
     ・「オ:ミドルウェア」
     ・「ア:アプリケーションソフトウェア」
     は L社の守備範囲です。
  3. 以上から、M社が構築して管理する範囲は
     イ:仮想化基盤
     エ:物理基盤
     の二つとなり、模範解答「イ、エ」と一致します。

誤りやすいポイント

  • 「SaaS と IaaS を混同」
    会計系で利用している SaaS のイメージをそのまま当てはめ、アプリ層まで M社が管理すると誤解しやすいです。今回は I サービス(IaaS)であり責任分界点が異なります。
  • 「ゲストOSもクラウド事業者が自動提供する」と思い込む
    PaaS ならOSまで面倒を見てもらえるケースがありますが、IaaS では OS の選定・パッチ適用は利用者側です。
  • 「仮想化基盤=ユーザが操作できるのでユーザ管理」と短絡する
    操作と運用責任は別物です。ハイパーバイザー自体の設計・冗長化・障害対応はクラウド事業者が負担します。

FAQ

Q: 物理基盤が冗長化されていると、ユーザはバックアップを取らなくても良いのですか?
A: 冗長化は可用性向上策の一つですが、データ消失リスクは残るためバックアップは依然としてユーザ責任になります。
Q: ゲストOSに障害が起きた場合、クラウド事業者のSLAは適用されますか?
A: IaaSのSLAは物理基盤・仮想化基盤の可用性に対してです。ゲストOSの設定ミスやパッチ不備はユーザ側の責任範囲となります。
Q: 将来 PaaS へ移行すると責任範囲はどう変わりますか?
A: 一般に PaaS ではゲストOSとミドルウェアも事業者管理となり、ユーザはアプリケーション層のみに集中できます。

関連キーワード: IaaS, SLA, 責任分界点, 冗長化, ハイパーバイザー

設問3〔基幹系業務システムのクラウドサービス移行〕について答えよ。

(2)本文中の下線③について、上司が指摘したX氏の考えの中で見直すべき点を、25字以内で答えよ。

模範解答

バックアップの遠隔地保管を廃止すること

解説

解答の論理構成

  1. 問題文では、IaaS を利用した災害対策サービスにより
    「西日本のDCのIサービスのユーザーデータファイルは、東日本のDCのIサービスのユーザーデータファイルと常時同期している」
    と説明されています。
  2. これを受けて X 氏は
    「現在行っているユーザーデータファイルのバックアップの遠隔保管を廃止できる」
    と判断しました。
  3. しかし前段でシステム部が実施していた対策は、
    「ストレージに保存されているユーザーデータファイルがマルウェアによって破壊されるリスクに備え、…フルバックアップを磁気テープに取得…遠隔地に保管」
    というものでした。
  4. 常時同期は物理災害による停止には有効ですが、マルウェア感染や論理障害が発生した場合、その破壊データも即座に同期先へ伝搬します。
    ➡ リストア可能な“点”としてのバックアップを遠隔地に保持し続ける必要があります。
  5. よって、上司が指摘した見直し点は「バックアップの遠隔地保管を廃止する」という X 氏の考えそのものです。

誤りやすいポイント

  • 冗長構成とバックアップを同一視し、同期先があればバックアップ不要と誤解する。
  • 災害対策=地震・火災だけと考え、マルウェアや誤操作など論理障害を軽視する。
  • 「99.99%以上」の高稼働率があればデータ保護も十分と勘違いし、RPO・RTOの視点を忘れる。

FAQ

Q: 同期レプリケーションとバックアップはどう違いますか?
A: レプリケーションは“可用性”確保のためのリアルタイム複製、バックアップは“保全性”確保のための時点コピーです。論理障害発生時はレプリカも壊れるため、バックアップが不可欠です。
Q: クラウド事業者が提供するスナップショット機能があれば遠隔バックアップは不要ですか?
A: スナップショット保持ポリシーが短い、同一リージョン内のみ保存など制限がある場合は別リージョン・オフラインへのバックアップが必要です。要件次第で併用を検討します。
Q: コスト削減で何を優先的に残すべきですか?
A: 事業継続に必須な機能を“重要度・復旧時間・復旧ポイント”で分類し、縮退運用でも止められない機能を特定します。

関連キーワード: 冗長化, レプリケーション, 遠隔バックアップ, 論理障害, RPO/RTO

設問3〔基幹系業務システムのクラウドサービス移行〕について答えよ。

(3)本文中の下線④として、クラウドサービスの可用性に関連するKPIとして適切なものを解答群の中から選び、記号で答えよ。
解答群  ア:M社が提供するサービスのサービス故障数  イ:M社起因のインシデントの問題を解決する変更の件数  ウ:M社のDCで実施した災害を想定した復旧テストの回数  エ:M社のサービスデスクが回答した問合せ件数  オ:SLAのサービスレベル目標が達成できなかった原因のうち、ストレージ容量不足に起因する件数

模範解答

解説

解答の論理構成

  1. 問題文は、X 氏が「サービス可用性管理」として「サービスカタログに記載されているサービスレベル項目のほかに、④可用性に関するKPIを設定する」ことを求めています。
  2. 可用性を管理・改善する KPI には、ITIL などで「サービス停止回数」「平均故障間隔 (MTBF)」「平均修復時間 (MTRS)」といった“実際に起きた故障や停止”を直接数値化する指標が推奨されています。
  3. 解答群を可用性との直接性で評価すると次のとおりです。
    • ア「M社が提供するサービスのサービス故障数」
      → 故障が発生した回数そのものであり、可用性低下の直接原因を示す代表的 KPI。
    • イ「M社起因のインシデントの問題を解決する変更の件数」
      → 変更の件数は改善施策の作業量であり、可用性“結果”を測る指標ではない。
    • ウ「M社のDCで実施した災害を想定した復旧テストの回数」
      → テスト回数は備えの活動量であって、可用性実績を示さない。
    • エ「M社のサービスデスクが回答した問合せ件数」
      → 利用者サポートの負荷を示すが、可用性とは無関係。
    • オ「SLAのサービスレベル目標が達成できなかった原因のうち、ストレージ容量不足に起因する件数」
      → 特定原因の件数で範囲が狭く、総合的な可用性 KPI になりにくい。
  4. よって、最も適切な KPI は「ア:M社が提供するサービスのサービス故障数」となります。

誤りやすいポイント

  • 「変更件数」や「復旧テスト回数」のように“活動量”を KPI と誤認して選択してしまう。KPI は“結果指標”としての可用性実績が求められます。
  • 「ストレージ容量不足に起因する件数」のように原因を限定した指標を採ると、他要因の故障を把握できず改善の全体最適を損なうことに気付きにくい。
  • 問合せ件数=障害発生数と短絡的に結び付ける誤解。問合せは操作質問なども含み、可用性 KPI としては粒度が粗すぎます。

FAQ

Q: KPI と SLA の違いは何ですか?
A: SLA の「サービスレベル目標」は提供者と利用者が合意した“達成すべき水準”です。一方 KPI は、その水準を継続的に達成・改善するために“内部管理用”にモニタリングする指標で、複数設定するのが一般的です。
Q: 可用性向上のために MTBF とサービス故障数はどちらを使うべきですか?
A: どちらも有用です。サービス故障数は単純で分かりやすく、短期傾向の把握に向きます。MTBF は連続稼働時間を示すため長期的な安定性を評価しやすく、組み合わせて用いると効果的です。
Q: KPI に原因別件数を採用してはいけないのですか?
A: 原因別件数は“詳細分析指標”として有用ですが、まずは総合的に可用性を評価できる上位 KPI を置き、原因分析はそのブレークダウンとして活用するのが一般的です。

関連キーワード: サービス稼働率, MTBF, MTRS, KPI, SLA

設問3〔基幹系業務システムのクラウドサービス移行〕について答えよ。

(4)本文中の下線⑤の判断基準とは何か。本文中の字句を用いて、15字以内で答えよ。

模範解答

重要事業機能の支援度合い

解説

解答の論理構成

  1. 【問題文】では、災害発生時に「基幹業務システムを一部縮退」してコストを抑える方針を検討する場面で、X氏が⑤判断基準を設定すると述べています。
  2. 同じ段落には、判断基準を「事業の視点から捉えた機能ごと」に適用し、「継続する機能を決める」と記されています。すなわち、BCPで最優先すべきかどうかを決める尺度は、事業継続に欠かせない機能かどうかです。
  3. これに対応するキーワードは、前段で示された
    「基幹系業務の ITサービスは、生産管理など事業が成功を収めるために不可欠な重要事業機能を支援しており、高可用性の確保が必要である。」
    という一文に含まれる「重要事業機能」。
  4. したがって、災害時に“どの機能を残すか”は「重要事業機能をどの程度支援しているか」で評価することになり、答えは
    「重要事業機能の支援度合い」
    となります。

誤りやすいポイント

  • サービス可用性(稼働率)とサービス継続性(BCP対策)の区別を取り違え、可用性指標(MTBF/MTRSなど)を判断基準に挙げてしまう。
  • 「重要」の対象を「システム」や「基幹系機能」と誤認し、本文にある「重要事業機能」を用いずに解答してしまう。
  • 判断基準=費用やリソース量と読み違え、コストそのものを挙げてしまう。

FAQ

Q: 「重要事業機能」と「重要基幹機能」は同じ意味ですか?
A: 本文ではBCPの文脈で「重要事業機能」という表現が用いられています。災害時に真っ先に守るべき“事業継続上の中核機能”を指します。
Q: 判断基準を設定する目的は何ですか?
A: BCPで機能を取捨選択する際に、ビジネスへの影響度を数値化・可視化し、限られたリソースを重要事業機能に集中させるためです。
Q: KPIと判断基準はどう違いますか?
A: KPIはサービス運用をモニタリングし継続的改善を図るための指標、判断基準はBCP発動時に機能の優先度を決めるための尺度です。

関連キーワード: BCP, 可用性, サービス稼働率, KPI, 災害対策
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