基本情報技術者 2019年 春期 午後 問06
社内システムの仕様変更の扱いに関する次の記述を読んで、設問1,2に答えよ。
Q社では、ある社内システムを刷新する開発プロジェクト(以下、刷新プロジェクトという)を実施している。刷新プロジェクトは、設計、プログラム開発、結合試験及び総合試験の4工程で推進する。刷新プロジェクトは、利用部門、プロジェクト管理チーム、プロジェクトマネージャ(以下、担当PMという)及び複数の開発チームで構成されている。Q社では、過去の社内システムの構築において、開発中に発生した仕様変更に伴い、プロジェクト計画の大幅な見直しが必要になったことがあり、利用部門から仕様変更の依頼が発生した場合の取扱手順を定めている。
〔仕様変更の依頼が発生した場合の取扱手順〕
プロジェクト管理チーム、担当PM、開発チームの役割は、次のとおりである。
・プロジェクト管理チーム
仕様変更依頼票の受渡しなど利用部門との書類や情報のやり取り、担当PMや開発チームとの書類のやり取り、取りまとめを行う。また、変更管理会議の運営を行う。
・担当PM
仕様変更依頼票の確認、仕様変更の採否の判断、プロジェクト計画の更新を行う。
・開発チーム
仕様変更依頼票の内容に基づく影響調査を実施する。
(1) 利用部門は、仕様変更の目的及び内容と、変更によって得られる効果を記述した仕様変更依頼票を起票し、a1に提出する。
(2) a1は、仕様変更依頼票を受け付けて、受付番号を記入して、管理簿への記録を行う。
(3) a2は、仕様変更依頼票の記述内容を確認し、内容が妥当であれば、受領し、変更内容に対する影響調査を該当するa3に対して依頼するようにa1に指示する。ここで、プログラム開発以降の工程では、システム全体への影響を迅速に把握する必要があるので、Q社のルールでは、全てのa3に対して影響調査を依頼する。受領しない場合、受領しない理由を仕様変更依頼票に付して利用部門に返却するようa1に指示する。
(4) 依頼されたa3は、仕様変更依頼票に記述してある仕様変更の内容に基づき、自チームで開発している機能に関する影響を調査する。追加、変更などが必要な設計書のページ数、対象プログラム及び影響を受ける開発規模を調査し、影響調査結果を回答する。
(5) a1は、影響調査結果を取りまとめ、利用部門、a2及び影響のあるa3のメンバを出席者とする変更管理会議を開催する。
(6) 変更管理会議において、影響調査結果を参考にして、担当PMは、仕様変更の依頼の重要性及び緊急性、納期遅延の可能性、工数増加の有無、変更によるプログラム品質への影響などを総合的に評価して、変更を採用するかしないかを判断する。
(7) プロジェクト管理チームは、利用部門に仕様変更依頼の採否の結果を回答する。
(8) 変更管理会議において、仕様変更依頼が採用された場合、担当PMはbする。
設問1:
問題文を見る〔仕様変更の依頼が発生した場合の取扱手順〕の記述中のに入れる適切な答えを、解答群の中から選べ。ここで、a1〜a3に入れる答えは、aに関する解答群の中から組合せとして適切なものを選ぶものとする。
aに関する解答群


bに関する解答群
ア:仕様変更依頼の内容に対する影響調査を指示
イ:仕様変更依頼の内容をプロジェクト計画に反映させて更新
ウ:仕様変更依頼票の起票に至る経緯をプロジェクト管理チームに確認
エ:仕様変更依頼票の起票に至る経緯を利用部門に確認
模範解答
a:エ、b:イ
解説
解答の導き方
この設問では、仕様変更の手続の各場面で、どの役割の人やチームが作業するのかを対応付けます。影響調査とは、仕様変更によって設計書やプログラムなどにどのような作業が発生するかを調べることです。
-
仕様変更依頼票を受け付ける役割を考えます。
は、仕様変更依頼票を受け付け、受付番号を記入して管理簿に記録します。また、本文ではプロジェクト管理チームが「利用部門との書類や情報のやり取り」や、関係者との書類の取りまとめを行うとされています。
したがって、依頼票を受け付けて記録するは、プロジェクト管理チームです。 -
依頼票を確認し、変更の扱いを判断する役割を考えます。
は、依頼票の記述内容を確認し、影響調査を依頼するかどうかを判断します。本文では担当PMの役割に「仕様変更依頼票の確認、仕様変更の採否の判断、プロジェクト計画の更新」とあります。
そのため、確認や判断を行うは担当PMです。 -
影響調査を行う役割を考えます。
は、変更によって自分たちが開発している機能にどのような影響が出るかを調査します。本文でも、影響調査は開発チームの役割とされています。
よって、は開発チームです。以上の対応に当てはまる選択肢は「エ」です。 -
変更が採用された後に担当PMが行うことを考えます。
が入るのは、変更管理会議で仕様変更依頼が採用された後の手順です。担当PMの役割には「プロジェクト計画の更新」が含まれています。変更が採用されたら、その内容を計画に反映する必要があるため、は「仕様変更依頼の内容をプロジェクト計画に反映させて更新」です。
なお、手順中の「受領」と、変更管理会議での「採用」は別の判断です。「受領」は、依頼内容を確認して影響調査に進める段階の判断です。一方、「採用」は、影響調査の結果も踏まえて、変更を実施するかどうか決める段階の判断です。
誤りやすいポイント
-
担当PMとプロジェクト管理チームの役割を混同する
書類の受渡しや取りまとめ、会議の運営はプロジェクト管理チームが担当します。変更内容の確認や採否の判断、計画の更新は担当PMが担当します。 -
「受領」と「採用」を同じ意味だと考える
依頼票を受領しても、その変更が最終的に採用されるとは限りません。受領後に影響調査を行い、その結果などを踏まえて採否を判断します。 -
影響調査を担当PMが行うと考える
担当PMは影響調査を依頼し、結果を踏まえて判断します。実際に自チームの機能への影響を調べるのは開発チームです。
FAQ
Q: 仕様変更が採用された場合、なぜプロジェクト計画を更新するのですか?
A: 変更によって必要な作業やスケジュールが変わる可能性があるためです。計画に反映することで、変更後の作業を関係者が共有できます。
A: 変更によって必要な作業やスケジュールが変わる可能性があるためです。計画に反映することで、変更後の作業を関係者が共有できます。
Q: なぜ影響調査を複数の開発チームに依頼するのですか?
A: ある機能の変更が、別のチームが開発している機能にも影響する場合があるためです。本文では、プログラム開発以降はシステム全体への影響を迅速に把握するため、全ての開発チームに依頼するとしています。
A: ある機能の変更が、別のチームが開発している機能にも影響する場合があるためです。本文では、プログラム開発以降はシステム全体への影響を迅速に把握するため、全ての開発チームに依頼するとしています。
Q: プロジェクト管理チームは、変更を採用するかどうかも決めますか?
A: いいえ。プロジェクト管理チームは書類や情報のやり取り、会議の運営などを行います。変更の採否を判断するのは担当PMです。
A: いいえ。プロジェクト管理チームは書類や情報のやり取り、会議の運営などを行います。変更の採否を判断するのは担当PMです。
関連キーワード: 変更管理、影響分析、要求管理、プロジェクト計画、工数見積り
設問2:
問題文を見る 次の記述中のに入れる適切な答えを、解答群の中から選べ。
刷新プロジェクトのスケジュールを、図1に示す。ここで、1か月は4週とする。

スケジュールのとおりに開発が進んでいたところ、刷新プロジェクトの開始後13週目において、機能Lに対する仕様変更依頼票が起票され、すぐに担当PMは受領した。刷新プロジェクトでは、機能Lを開発チーム1が、機能Mを開発チーム2が、機能Nを開発チーム3が担当している。現在の工程では、変更内容に対する影響調査の依頼先は、Q社のルールにのっとり、cとなる。
〔影響調査結果の概要〕
影響調査の結果、開発チーム1が担当している機能L(当初計画の開発規模は、400kステップ)だけに影響があることが分かった。機能Lに関する生産性及び当初計画の工数を、表1に示す。

仕様変更を行っても、開発を進めている機能Lのプログラムを変更する必要はなく、機能Lの当初計画の開発規模の10%の追加開発が必要と分かった。また、仕様変更分における工程ごとの生産性は、当初計画と同じである。仕様変更に関わる、設計工程から結合試験工程までは、当初計画分と切り離して実施可能であり、この期間に必要な追加の工数はd人月となる。
開発チーム1では、仕様変更分の総合試験の実施に関して、次の二つの計画を検討した。
・計画1
仕様変更分の総合試験は、当初計画分の総合試験の開始時点から実施する。
・計画2
仕様変更分の総合試験は、当初計画分の総合試験の5週目開始時点から実施する。
仕様変更に関わる、設計工程から結合試験工程までの期間は、刷新プロジェクトの開始後17週目開始から、計画1又は計画2の総合試験工程の開始前までとする。総合試験工程は、図1のスケジュールで示した当初計画どおりに完了させる。ここで、仕様変更分の開発に必要な追加の要員数は、設計工程から結合試験工程までの期間の各週で同一とする。また、追加の要員は、全ての工程を担当できるスキルを備えているものとする。
計画1の場合は刷新プロジェクトの開始後e週目終了までに、計画2の場合は刷新プロジェクトの開始後36週目終了までに、結合試験工程を完了させる必要がある。仕様変更に関わる、設計工程から結合試験工程までの期間の各週に必要な追加の要員は、計画1の場合は少なくともf人、計画2の場合は少なくともg人である。追加可能な要員が各週とも最多4人である場合、h。
前記の影響調査結果も踏まえて変更管理会議を開催し、仕様変更依頼を採用することになった。
cに関する解答群
ア:開発チーム1
イ:開発チーム2
ウ:開発チーム3
エ:開発チーム1及び開発チーム2
オ:開発チーム1及び開発チーム3
カ:開発チーム2及び開発チーム3
キ:全ての開発チーム
dに関する解答群
ア:19
イ:23
ウ:190
エ:230
eに関する解答群
ア:17
イ:31
ウ:32
エ:36
f, gに関する解答群
ア:1
イ:2
ウ:3
エ:4
オ:5
カ:6
キ:7
ク:8
hに関する解答群
ア:計画1だけが実現可能である
イ:計画2だけが実現可能である
ウ:両計画とも実現可能である
エ:両計画とも実現不可能である
模範解答
c:キ、d:ア、e:ウ、f:オ、g:エ、h:イ
解説
解答の導き方
まず、図1のスケジュールを週に置き換えます。1か月は4週なので、各工程の期間は次のようになります。
c:影響調査の依頼先
刷新プロジェクトの開始後13週目は、プログラム開発の期間(9~24週)に当たります。問題文には、プログラム開発以降は「全てのa3に対して影響調査を依頼する」とあります。
このルールは、実際に影響があるチームが判明する前に、システム全体への影響を確認するためのものです。したがって、影響調査の依頼先は全ての開発チームとなり、解答群ではキです。
d:設計工程から結合試験工程までの追加工数
機能Lの当初計画の開発規模は400kステップで、仕様変更によってその10%の追加開発が必要です。
追加する開発規模は、
です。
生産性は「1人月あたりに開発できる規模」を表します。工程ごとに、追加工数を計算します。
したがって、設計工程から結合試験工程までに必要な追加工数は、
です。よって、解答群ではアです。総合試験の工数は、ここで求める範囲には含めません。
e:計画1で結合試験を完了する週
当初計画の総合試験は、33週目に始まります。計画1では、仕様変更分の総合試験を当初計画分と同時に始めるため、仕様変更分の結合試験は、総合試験が始まる前に終えておく必要があります。
つまり、結合試験の完了期限は32週目の終了です。よって、解答群ではウです。
f:計画1で必要な追加要員数
dで求めた追加工数19人月を、週ごとの人数に換算します。1か月は4週なので、19人月は次の人週に相当します。
計画1では、追加作業に使える期間は17週目から32週目までです。両端の週を含めるので、期間は、
です。毎週同じ人数を配置する場合、必要な人数は、
となります。人数は整数で、4人では必要な工数を満たせないため、少なくとも5人が必要です。よって、解答群ではオです。
g:計画2で必要な追加要員数
当初計画の総合試験は33週目に始まります。その5週目は、33週目を1週目として数えるため、37週目に始まります。計画2では、その前の36週目までに結合試験を終える必要があります。
追加作業に使える期間は17週目から36週目までなので、
です。必要な人数は、
となります。4人なら必要な工数を満たせるため、少なくとも4人が必要です。よって、解答群ではエです。
h:追加可能な要員が最多4人の場合
計画1では各週に少なくとも5人必要ですが、追加できるのは最多4人です。そのため、計画1は実現できません。
計画2では各週に少なくとも4人必要で、最多4人という条件を満たせます。そのため、計画2は実現できます。よって、解答群ではイです。
誤りやすいポイント
- 影響調査の依頼先は、あとで影響があると判明したチームだけではありません。13週目はプログラム開発中なので、ルールどおり全ての開発チームに依頼します。
- 追加工数は、追加開発規模を工程ごとの生産性で割って求めます。生産性の値を工数に掛けるのではありません。
- dで求めるのは設計工程から結合試験工程までの工数です。総合試験の工数は含めません。
- 期間の週数を数えるときは、開始週と終了週の両方を含めます。そのため、「終了週-開始週」ではなく、「終了週-開始週+1」で数えます。
- 4.75人や3.8人はそのまま要員数にできません。「少なくとも」必要な人数を求めるため、人数を切り上げます。
FAQ
Q: 影響が機能Lだけと分かっているのに、なぜ全ての開発チームに調査を依頼するのですか?
A: 影響調査を始める時点では、どの機能やチームに影響があるか確定していません。プログラム開発以降は、システム全体への影響を早く確認するため、全ての開発チームに依頼するルールになっています。
A: 影響調査を始める時点では、どの機能やチームに影響があるか確定していません。プログラム開発以降は、システム全体への影響を早く確認するため、全ての開発チームに依頼するルールになっています。
Q: 4.75人を4人にできないのはなぜですか?
A: 4人を16週間配置すると、作業量は64人週です。必要な76人週に届きません。そのため、1週間あたりの人数は5人にする必要があります。
A: 4人を16週間配置すると、作業量は64人週です。必要な76人週に届きません。そのため、1週間あたりの人数は5人にする必要があります。
Q: 19人月を76人週に換算するのはなぜですか?
A: 人月は月単位の工数ですが、この問題では作業期間を週で数えます。1か月を4週としているため、19人月を週単位の工数に直してから、期間で割ります。
A: 人月は月単位の工数ですが、この問題では作業期間を週で数えます。1か月を4週としているため、19人月を週単位の工数に直してから、期間で割ります。
関連キーワード: 変更管理、影響分析、工数見積り、生産性、工程管理



