情報セキュリティマネジメント 2016年 秋期 午前(科目A) 問31
問題文
プロバイダ責任制限法において、損害賠償責任が制限されるプロバイダの行為に該当するものはどれか。ここで、“利用者”とはプロバイダに加入してサービスを利用している者とする。
選択肢
ア:契約書に記載した利用者の個人情報を、本人の同意を得ずに関連会社に渡した。
イ:他のプロバイダに移転する利用者に対して、不当に高い違約金を請求した。
ウ:利用者の送信メールの内容を盗聴し、それを興味本位で他人に伝えた。
エ:利用者の電子掲示板への書込みが、他人の権利を侵害しているとは知らずに放置した。(正解)
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プロバイダの責任制限【情報セキュリティマネジメント解説】
正解の理由
プロバイダ(インターネット接続や掲示板などのサービスを提供する事業者)が、利用者の電子掲示板への書き込みを「その内容が他人の権利を侵害しているとは知らなかった」ために放置した行為は、損害賠償責任が制限される対象になります。問題文の選択肢では、エがこれに該当します。
理由を簡単に言うと、プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限等に関する法律)は、プロバイダが利用者の投稿などを単に「中継・保管」しているだけで、侵害を知らず、かつ適切な対応をしている(または知り得なかった)場合に、損害賠償責任を限定する仕組みを定めています。したがって、投稿の内容を知らずに放置したケースが法の想定範囲です。
解法ステップ
- 「プロバイダ責任制限法」が何を保護するかを確認する。
- 中立的な仲介者としてのプロバイダの責任を限定することが目的。
- 各選択肢が「プロバイダの『中立的・受動的』な行為」か「能動的・違法な行為」かを判別する。
- 受動的(単に掲示物を放置する等)なら制限の対象になりやすい。
- 能動的(個人情報の無断提供、盗聴、契約違反等)は対象外。
- 当てはまる選択肢を選ぶ。今回では「知らずに放置」が該当するため エ を選ぶ。
選択肢別の誤答解説
- ア: 契約書に記載した利用者の個人情報を、本人の同意なく関連会社に渡す行為。
- これは個人情報の不適切な提供です。個人情報保護法や契約上の義務に違反します。プロバイダ責任制限法はこの種の個人情報漏えいを免責するものではありません。
- イ: 他のプロバイダに移転する利用者に対して、不当に高い違約金を請求した。
- これは契約上の不当な行為(営業・取引慣行や民法上の不当利益)であり、プロバイダ責任制限法の「中立的仲介者としての免責」には該当しません。
- ウ: 利用者の送信メールの内容を盗聴し、それを興味本位で他人に伝えた。
- 送信メールの盗聴は通信の秘密(通信の内容を第三者が無断で知ることを禁止する権利)を侵害する重大な違法行為です。免責の対象外です。
- エ: 利用者の電子掲示板への書込みが、他人の権利を侵害しているとは知らずに放置した。
- これが正解。プロバイダが単に利用者投稿を保管・提供していて、侵害を知らない(または知ることが困難)場合には、損害賠償責任が制限され得ます。ただし、通報があれば削除等の対応義務が生じます。
よくある誤解
- 「免責=何をやっても責任がない」ではない。
- 免責は限定的です。プロバイダが侵害を知っているのに何もしなかったり、積極的に違法行為を行ったりすると免責は受けられません。
- 「個人情報の漏えいも免責される」は誤り。
- 個人情報の不適切な取り扱い(無断提供や盗聴など)は別の法律や契約違反であり、責任は免れません。
補足コラム
プロバイダ責任制限法は、ユーザー投稿による被害(名誉毀損や権利侵害など)について、発信者情報の開示請求や投稿の削除(いわゆる「削除要請」)の仕組みも定めています。実務では次のような対応が行われます。
- 被害を受けた側がプロバイダに対して削除や発信者情報の開示を求める。
- プロバイダは請求内容を確認し、裁判所の手続きを踏むか、相手と連絡を取って投稿を削除するなどの対応を行う。
- プロバイダが投稿を削除したり情報を開示した場合でも、一定の要件を満たせば損害賠償責任は制限されることがあります。
職場でのイメージ:社内に掲示板やSNSを提供している部署は、外部からの削除要請や問い合わせが来た時に、速やかに所定の窓口(法務や総務)に回す体制を作ると良いです。記録(いつ、誰から、どのような対応をしたか)を残すことも重要です。
FAQ
Q. プロバイダが投稿を見ていないと「知らなかった」と言えるのですか?
A. ただ「見ていない」と言うだけでは不十分です。合理的に知り得たはずか、通知が来たかどうかなどの事情で判断されます。通知を受けたら速やかな確認と対応が求められます。
A. ただ「見ていない」と言うだけでは不十分です。合理的に知り得たはずか、通知が来たかどうかなどの事情で判断されます。通知を受けたら速やかな確認と対応が求められます。
Q. 投稿を放置したら必ず免責されますか?
A. いいえ。放置が合理的であったか、知らなかったことに過失がなかったかが問題になります。通知を受けた後に放置すると免責されない可能性が高まります。
A. いいえ。放置が合理的であったか、知らなかったことに過失がなかったかが問題になります。通知を受けた後に放置すると免責されない可能性が高まります。
Q. 企業が提供するメールサービスで従業員のメールを勝手に読んでもいいですか?
A. いいえ。従業員のメールを無断で覗くことは通信の秘密やプライバシーの侵害になります。職場内でもルールと同意、正当な理由(監査方針など)が必要です。
A. いいえ。従業員のメールを無断で覗くことは通信の秘密やプライバシーの侵害になります。職場内でもルールと同意、正当な理由(監査方針など)が必要です。
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