情報セキュリティマネジメント 2016年 春期 午前(科目A) 問16
問題文
ディジタルフォレンジックスでハッシュ値を利用する目的として、適切なものはどれか。
選択肢
ア:一方向性関数によってパスワードを復元できないように変換して保存する。
イ:改変されたデータを、証拠となり得るように復元する。
ウ:証拠となり得るデータについて、原本と複製の同一性を証明する。(正解)
エ:パスワードの盗聴の有無を検証する。
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ハッシュ値の同一性証明【情報セキュリティマネジメント解説】
正解の理由
ディジタルフォレンジックス(digital forensics:コンピュータや記録媒体に残る証拠を収集・解析する手法)でハッシュ値(hash value:データから一方向に計算される短い固定長の要約値)を利用する主な目的は、証拠となり得るデータの「原本」と「複製」が同一であることを示すことです。選択肢の中では ウ がこれに該当します。
具体的には、解析前に取得したディスクイメージやファイルのハッシュ値を記録しておき、解析後に同じハッシュ値が得られれば「解析中にデータが改変されていない」ことを客観的に示せます。裁判や報告書で「これはオリジナルと同一である」と主張するための証拠となります。
解法ステップ
- 問題の目的を確認する:ディジタルフォレンジックスでハッシュ値を使う「目的」を問われている。
- ハッシュ値の性質を思い出す:一方向性(元に戻せない)と同一データであれば同じ出力になる性質がある。
- 選択肢を照合する:
- データを復元する、盗聴を検証する、パスワード管理などハッシュの性質と合致するかを検討する。
- 同一性の証明に関する記述が正しく当てはまる選択肢を選ぶ(ウ)。
選択肢別の誤答解説
- ア: 一方向性関数によってパスワードを復元できないように変換して保存する。
→ これは「パスワード保存」の話で、ハッシュの用途の一つではありますが、設問はディジタルフォレンジックスにおける目的を問うています。フォレンジックスでは保存よりも証拠の同一性確認が主目的です。 - イ: 改変されたデータを、証拠となり得るように復元する。
→ ハッシュ値はデータの要約であり、失われたデータを復元する(元に戻す)機能はありません。ハッシュで改変を検出することはできますが、改変前の状態に「戻す」ことはできません。 - ウ: 証拠となり得るデータについて、原本と複製の同一性を証明する。
→ 正答。ハッシュの「同一データは同じハッシュ値を出す」性質を利用して、原本と複製が一致することを示す。 - エ: パスワードの盗聴の有無を検証する。
→ ハッシュはデータの同一性確認に使える一方で、ネットワーク上の盗聴(パスワードが傍受されたか)を直接検知する手段ではありません。
よくある誤解
- ハッシュ値が同じなら「100%安全に同一」と思い込む誤解:現在の強いハッシュ関数(例:SHA-256)は極端に衝突が起きにくいですが、理論的には衝突(異なるデータが同じハッシュ)可能性があります。複数のハッシュ関数を併用したり、取得手順やタイムスタンプ、署名で保全性を補強します。
- ハッシュは「暗号化」と同じと勘違いする:暗号化は復号して元に戻せますが、ハッシュは基本的に一方向で復元できません(後戻りできない要約)。用途が異なります。
補足コラム
- よく使われるハッシュ関数:MD5(古い)、SHA-1(弱点あり)、SHA-256(現時点で推奨)。法的手続きや社内ルールでは、SHA-256など強力な関数を使うことが推奨されます。
- フォレンジックス運用のイメージ:現場でディスクをイメージ(丸ごとコピー)して、その場でイメージのハッシュ値を計算・記録します。解析室でも同じ手順でハッシュを計算し、元と一致すれば証拠の保全が担保されたと報告できます。チェーン・オブ・カストディ(証拠の保管・移転の履歴)と合わせて記録するのが実務です。
- 証拠性を高めるには:ハッシュ値の記録だけでなく、計算に使ったツール名とバージョン、計算日時、担当者名なども合わせて記録します。場合によっては第三者によるタイムスタンプや電子署名をつけるとより強い証拠になります。
FAQ
Q. ハッシュ値が一致していれば100%改変されていないと言えますか?
A. 実務上は「極めて高い確度で同一」と判断できますが、理論的に衝突の可能性はゼロではありません。信頼性を上げるために強いハッシュ関数の使用や複数ハッシュ、手続きの厳格化が行われます。
A. 実務上は「極めて高い確度で同一」と判断できますが、理論的に衝突の可能性はゼロではありません。信頼性を上げるために強いハッシュ関数の使用や複数ハッシュ、手続きの厳格化が行われます。
Q. ハッシュはどんな場面で使われますか?
A. ディスクイメージの同一性確認、ファイル改変検知、データ整合性チェック、パスワードの保存(別用途)などです。目的に応じて使い分けます。
A. ディスクイメージの同一性確認、ファイル改変検知、データ整合性チェック、パスワードの保存(別用途)などです。目的に応じて使い分けます。
Q. MD5やSHA-1はもう使えませんか?
A. セキュリティ上の弱点(衝突が比較的作りやすい)が見つかっているため、法的証拠としては避け、SHA-256などより強力な関数を使用することが推奨されます。
A. セキュリティ上の弱点(衝突が比較的作りやすい)が見つかっているため、法的証拠としては避け、SHA-256などより強力な関数を使用することが推奨されます。
関連キーワード: ディジタルフォレンジックス、ハッシュ値、SHA-256、証拠保全、チェーン・オブ・カストディ、衝突耐性

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