情報セキュリティマネジメント 2017年 春期 午前(科目A) 問09
問題文
暗号の危殆化に該当するものはどれか。
選択肢
ア:暗号化通信を行う前に、データの伝送速度や、暗号の設定情報などを交換すること
イ:考案された当時は容易に解読できなかった暗号アルゴリズムが、コンピュータの性能の飛躍的な向上などによって、解読されやすい状態になること(正解)
ウ:自身が保有する鍵を使って、暗号化されたデータから元のデータを復元すること
エ:元のデータから一定の計算手順に従って疑似乱数を求め、元のデータをその疑似乱数に置き換えること
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暗号の危殆化【情報セキュリティマネジメント解説】
正解の理由
暗号の危殆化とは、かつて安全と考えられていた暗号アルゴリズム(データを変換して守るための手順や数式のまとまり)が時間の経過や技術の進歩で安全でなくなることを指します。選択肢の中でこれを示しているのは イ です。イ は「当時は解読が難しかった暗号が、コンピュータ性能の向上などで解読されやすくなる」と述べており、まさにアルゴリズム自体の安全性が低下する状態を説明しています。
(補足:暗号アルゴリズムとは、データを他人に読まれないように変換するための方法や規則のことです。解読とはその変換を元に戻す試み、つまり第三者が元のデータを取り出すことをいいます。)
解法ステップ
- 「危殆化(きたいか)」の意味を確認する。→「脆弱(ぜいじゃく)になり危険が高まること」。
- 各選択肢が何を表しているかを簡単に分類する。
- 暗号の仕組みや運用に関する手順か(運用的事象)、
- 鍵やデータの扱いか(鍵の利用や漏洩)、
- アルゴリズム自体の弱体化か(危殆化)。
- 「アルゴリズム自体が解読されやすくなる」という説明を含む選択肢を選ぶ。→これは イ。
選択肢別の誤答解説
- ア: 暗号化通信を行う前に設定情報を交換する行為を説明しています。これは「プロトコルのネゴシエーション」など運用上の手順であり、危殆化の定義ではありません。
- イ: 正解。技術進歩などによりアルゴリズムそのものが弱くなる事象を示しています。
- ウ: 「自身が保有する鍵を使って復元する」ことは正しい復号(復元)操作の説明です。鍵が漏れた場合の問題は「鍵管理の失敗」であって、暗号アルゴリズムの危殆化とは別です。
- エ: 「元のデータから疑似乱数を求めて置き換える」は、乱数や置換の説明に近く、プロセスの一例かもしれませんが、危殆化の定義ではありません。アルゴリズムの弱体化を説明していません。
よくある誤解
- 暗号の危殆化 = 鍵が漏れた状態 と混同する
→ 鍵漏洩は「運用上の事故」で、危殆化は「方法そのもの(アルゴリズム)の安全性低下」です。 - すべての暗号が同じ速度で危殆化すると思い込む
→ 対称鍵暗号(例:AES)と公開鍵暗号(例:RSA)は脆弱化の要因や速度が異なります。特に量子計算の影響は公開鍵暗号に大きく作用します。
補足コラム
- 具体例で覚えると分かりやすい
- DES(Data Encryption Standard)は短い鍵長のため脆弱になり廃止されました。
- SHA-1(ハッシュ関数の一種)は衝突(異なるデータが同じハッシュになること)が実証され、推奨されなくなりました。
- なぜ起きるか(原因)
- コンピュータの計算性能向上や新しい解析手法の発見、数学的弱点の発見、量子コンピュータの登場などが原因です。
- 職場での運用イメージ
- 暗号の利用一覧(どの暗号をどこで使っているか)を管理し、ベンダーや標準化団体(例:NISTやIETF)の推奨に応じてアルゴリズム更新や鍵長の見直しを行います(これを「アルゴリズムアジリティ:暗号方式を差し替えやすくしておく仕組み」と言います)。
FAQ
Q1: 鍵が長ければ危殆化しないですか?
A1: 鍵長は重要ですが万能ではありません。鍵長が十分でもアルゴリズム自体に数学的弱点が見つかれば危殆化します。両方を見ます。
A1: 鍵長は重要ですが万能ではありません。鍵長が十分でもアルゴリズム自体に数学的弱点が見つかれば危殆化します。両方を見ます。
Q2: 量子コンピュータは今すぐすべての暗号を破りますか?
A2: 現実的な大規模量子コンピュータはまだ商用化されていませんが、将来的に公開鍵暗号(RSAやECC)に大きな影響を与えると予想されています。対策として「ポスト量子暗号(量子耐性暗号)」への移行準備が進んでいます。
A2: 現実的な大規模量子コンピュータはまだ商用化されていませんが、将来的に公開鍵暗号(RSAやECC)に大きな影響を与えると予想されています。対策として「ポスト量子暗号(量子耐性暗号)」への移行準備が進んでいます。
Q3: 職場で今すぐできる対策は?
A3: 暗号の利用状況を把握し、古いアルゴリズム(例:DES、RC4、MD5、SHA-1)を使っていないか確認します。ベンダーのセキュリティ情報を定期的にチェックし、必要なら更新や切替計画を立ててください。
A3: 暗号の利用状況を把握し、古いアルゴリズム(例:DES、RC4、MD5、SHA-1)を使っていないか確認します。ベンダーのセキュリティ情報を定期的にチェックし、必要なら更新や切替計画を立ててください。
関連キーワード: 暗号アルゴリズム、危殆化、鍵管理、アルゴリズムアジリティ、量子耐性、脆弱性管理、ハッシュ関数、TLS、RSA、AES、SHA-1

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