ITパスポート 2015年 春期 問46
問題文
システム開発プロジェクトの品質マネジメントには、成果物の品質要求事項や品質標準を定め、それらを達成するための方法を明確にする品質計画プロセスがある。品質計画プロセスの考え方として、適切なものはどれか。
選択肢
ア:過去のシステム開発プロジェクトの成果物に全く同じものが無ければ、過去の品質標準は参考にならない。
イ:全てのプロジェクトでスケジュールを最優先すべきなので、目標とする品質を達成させるためのレビューやテストの期間は短くしてよい。
ウ:全てのプロジェクトで品質を最優先し、成果物の品質を高めるためには予算に制約を設定すべきではない。
エ:目標とする品質を達成させるための活動によってもたらされる、手直しの減少や生産性の向上、ステークホルダの満足度の向上などの効果と、必要なコストを比較検討する。(正解)
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品質計画プロセスの考え方【ITパスポート 解説】
正解の理由
設問は「品質計画プロセス」で、成果物の品質を達成するためにどの活動を行うかを決めることが主題です。品質活動にはレビューやテスト、教育などのコストがかかります。一方で、適切な品質活動は手直し(リワーク)の削減や生産性向上、ステークホルダ(利害関係者:影響を受ける人や組織)の満足度向上といった効果をもたらします。これらの「効果」と「必要なコスト」を比較して、投資対効果が見合うかを判断する考え方が最も適切です。したがって、該当するのは エ です。
解法ステップ
- 設問のキーワードを確認:「品質計画プロセス」「達成するための方法を明確に」→ 品質向上のための活動の設計・評価が問われている。
- 各選択肢が示す方針をチェック:
- 極端(過去を全否定、スケジュール最優先、予算無視)か、バランスを取るか。
- 品質計画は現実の制約(コスト・スケジュール・リスク)を踏まえて決めるもの、と判断する。
- コストと効果の比較(費用便益分析)を挙げている選択肢を選ぶ(= エ)。
選択肢別の誤答解説
- ア: 「過去の成果物に全く同じものが無ければ参考にならない」
- 誤り。過去の品質標準や教訓(ナレッジ)は、プロジェクトの特性に合わせて調整(テーラリング)すれば有益です。完全一致は稀でも、パターンや注意点、検査項目などは使えます。
- イ: 「スケジュール最優先だからレビューやテストを短縮してよい」
- 誤り。テストやレビューを削ると不具合が残り、リリース後の手直しや信用失墜で結果的に大きな遅延・コスト増になることが多いです。スケジュールと品質はトレードオフですが、無条件に短縮するのは危険です。
- ウ: 「品質最優先で予算に制約を設定すべきでない」
- 誤り。無尽蔵に費用をかければ品質は上がるかもしれませんが、現実のプロジェクトには予算制約があります。重要なのはコストに見合った品質レベルを決めることです。
- エ: 「活動による効果と必要コストを比較検討する」
- 正しい。品質活動は投資(コスト)とその効果(不具合削減・生産性向上など)を見比べて決めるべきです。
よくある誤解
- 「高品質=無制限にコストをかければよい」
- 誤解です。品質には限界と逓減する効果(diminishing returns)があります。重要なのは「どこまで品質を上げるか(適切な品質水準)」を決めることです。
- 「過去の標準は古ければ役に立たない」
- 標準はそのまま使う必要はありませんが、参考情報や改善点は多く含まれています。ゼロから作るより効率的です。
- 「スケジュール最優先にすれば常に得策」
- 短期的には速く見えても、欠陥による再作業で長期的に損になることがよくあります。バランスを考えましょう。
補足コラム
品質活動を評価する際によく使う考え方に「品質コスト(Cost of Quality)」があります。主な分類は次の3つです。
- 予防コスト(Prevention):問題を起こさないための投資(教育、レビュー設計など)
- 評価コスト(Appraisal):品質を検査するための投資(テスト、品質評価)
- 失敗コスト(Failure):内部や外部で発生した不具合対応や顧客対応のコスト
簡単な数値例:
- 追加のテストに 投資して、出荷後の手直しが 減るなら、投資する価値があります(節約 = の正の効果)。このようにコストと効果を比較して判断します。
関連する考え方:
- PDCA(Plan-Do-Check-Act:計画→実行→評価→改善)で品質計画を運用し、改善を回していくと効果的です。
覚え方のコツ:品質は「無条件の優先」でも「無視」でもない。必ず「効果とコストのバランス」で考える。
FAQ
Q1: 品質計画で一番重要なことは何ですか?
A1: プロジェクトの目的や制約(納期・予算・リスク)を踏まえ、どの品質水準を目指すか決め、そのための活動とコストを明確にすることです。
A1: プロジェクトの目的や制約(納期・予算・リスク)を踏まえ、どの品質水準を目指すか決め、そのための活動とコストを明確にすることです。
Q2: 過去のプロジェクトの資料はどの程度参考にすべきですか?
A2: そのまま使うのではなく、プロジェクトの規模や技術、要件の差を考慮して「使える部分を取り入れ、不要な部分は修正する」姿勢が有効です。
A2: そのまま使うのではなく、プロジェクトの規模や技術、要件の差を考慮して「使える部分を取り入れ、不要な部分は修正する」姿勢が有効です。
Q3: 品質向上のために必ずやるべき活動はありますか?
A3: すべてのプロジェクトで同一というわけではありませんが、要件レビュー、設計レビュー、単体・結合テストの計画は基本的に必要です。ただし実施の深さや期間はコストと効果で決めます。
A3: すべてのプロジェクトで同一というわけではありませんが、要件レビュー、設計レビュー、単体・結合テストの計画は基本的に必要です。ただし実施の深さや期間はコストと効果で決めます。
関連キーワード: 品質マネジメント、品質計画、品質コスト、費用便益分析、レビュー、テスト、PDCA、ステークホルダ満足度

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