ITパスポート 2019年 秋期 問17
問題文
イノベーションのジレンマに関する記述として、最も適切なものはどれか。
選択肢
ア:最初に商品を消費したときに感じた価値や満足度が、消費する量が増えるに従い、徐々に低下していく現象
イ:自社の既存商品がシェアを占めている市場に、自社の新商品を導入することで、既存商品のシェアを奪ってしまう現象
ウ:全売上の大部分を、少数の顧客が占めている状態
エ:優良な大企業が、革新的な技術の追求よりも、既存技術の向上でシェアを確保することに注力してしまい、結果的に市場でのシェアの確保に失敗する現象(正解)
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イノベーションのジレンマに関する記述【ITパスポート 解説】
正解の理由
イノベーションのジレンマとは、優良な大企業が既存の高付加価値顧客や既存事業の利益を重視するあまり、新しい(しばしば最初は魅力が小さい)革新的技術やビジネスモデルへの投資を避け、結果的に市場で敗れる現象です。これはクレイトン・クリステンセン(Clayton Christensen)が提唱した概念で、従来の事業を守ろうとする経営判断が、かえって将来の敗因になるという「ジレンマ(板挟み)」を指します。
選択肢の中でこの説明に合致するのが エ です。エ は「優良な大企業が既存技術の向上に注力してしまい、市場でのシェア確保に失敗する」とあり、イノベーションのジレンマの核心を正しく表しています。
解法ステップ
- 「イノベーションのジレンマ」の定義を思い出す
- 成功している企業が既存顧客・事業を優先するために新しい技術に投資できず、結果的に敗れる現象。
- 各選択肢を定義と照らし合わせる
- 「消費量が増えると満足度が下がる」→ 経済学の限界効用(= ア)
- 「自社の新商品が既存商品を奪う」→ カニバリゼーション(= イ)
- 「少数の顧客が売上の大部分を占める」→ 売上集中やパレート原理(= ウ)
- 「既存技術の改善に注力して結果的に失敗」→ イノベーションのジレンマ(= エ)
- 一致するものを選ぶ → エ
選択肢別の誤答解説
- ア: 「最初に商品を消費したときに感じた価値が消費量が増えると低下する現象」
- これは限界効用(marginal utility:追加で得られる満足度が減る現象)の説明です。イノベーションの話ではありません。
- イ: 「自社の既存商品がシェアを占めている市場に、自社の新商品を導入して既存商品のシェアを奪う現象」
- これは自社製品同士のカニバリゼーション(自社毀損)に近い説明です。イノベーションのジレンマは外部から来る破壊的イノベーション(disruptive innovation)が問題となる点が重要です。
- ウ: 「全売上の大部分を、少数の顧客が占めている状態」
- これは売上の集中(例:80/20の法則)に関する記述であり、ジレンマの定義とは異なります。
- エ: 「優良な大企業が既存技術の向上でシェアを確保することに注力してしまい、結果的に市場でのシェアの確保に失敗する現象」
- これがイノベーションのジレンマの要点を捉えています。既存顧客の要求や利益に合わせた“持続的イノベーション(sustaining innovation)”ばかり追うと、破壊的イノベーションに置き換えられるリスクがある、ということです。
よくある誤解
- 「ただの保守的経営や意思決定ミス」
- 誤解:イノベーションのジレンマは単に経営者が保守的だから起きる。
- 正しくは:合理的に見える判断(既存高付加価値顧客への対応や短期利益の最大化)が、長期的にリスクになる構造的問題です。
- 「破壊的イノベーションは常に技術的に優れている」
- 誤解:破壊的な新技術は最初から高性能で既存技術を上回る。
- 正しくは:初期の破壊的技術は性能面で劣ることが多いが、低コスト・新しい顧客層への適合といった別の価値で市場を広げ、徐々に主流を奪います。
補足コラム
- 破壊的イノベーション(disruptive innovation:既存の価値提供方法を根本的に変える新しい技術やビジネスモデル)は、最初は小さな市場や低価格帯に入り込みます。大手企業は目先の利益や既存顧客の要求を重視するため、これら小市場には投資しにくい構造があります。その結果、破壊的技術が改良され主流市場に到達したときに手遅れになるのです。
- 具体例(身近でわかりやすいもの)
- Blockbuster(レンタルビデオ店)が、低コスト・利便性の高いNetflix(最初は郵送、後にストリーミング)に市場を奪われたケース。
- Kodakはデジタルカメラ技術を早くから開発していたものの、フィルム事業の価値を守る判断が裏目に出て苦境に陥りました。
FAQ
Q1: 破壊的イノベーションと持続的イノベーションの違いは?
A1: 破壊的イノベーション(disruptive innovation)は、既存市場の外や低価格帯から入り、別の価値で市場を広げます。持続的イノベーション(sustaining innovation)は既存顧客に対して性能や機能を高める改善です。
A1: 破壊的イノベーション(disruptive innovation)は、既存市場の外や低価格帯から入り、別の価値で市場を広げます。持続的イノベーション(sustaining innovation)は既存顧客に対して性能や機能を高める改善です。
Q2: イノベーションのジレンマは大企業だけの問題ですか?
A2: 主に成功している大企業で顕著ですが、中堅企業でも起こり得ます。共通点は「既存の収益源を守るための合理的な判断」が将来の機会を阻む点です。
A2: 主に成功している大企業で顕著ですが、中堅企業でも起こり得ます。共通点は「既存の収益源を守るための合理的な判断」が将来の機会を阻む点です。
Q3: 回避策はありますか?
A3: いくつかの方法があります。例)破壊的技術を扱う独立した事業部を作る、別の評価指標で小市場に投資する、外部スタートアップと協業・買収するなどです。
A3: いくつかの方法があります。例)破壊的技術を扱う独立した事業部を作る、別の評価指標で小市場に投資する、外部スタートアップと協業・買収するなどです。
関連キーワード: イノベーション, ジレンマ, 破壊的イノベーション, 持続的イノベーション, カニバリゼーション, リソース配分, クリステンセン, 事業戦略, 市場浸透, 企業変革

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