プロジェクトマネージャ 2025年 午後1 問03
プロジェクト実施中の計画変更に関する次の記述を読んで、設問に答えよ。
商品取引事業を行っているA社の取引管理システムは、来年4月末にハードウェアの保守期限切れを迎える。そこで、A社では、ハードウェアの更改に合わせて取引管理システムを改修し、来年3月末にリリースするプロジェクト(以下、本プロジェクトという)を実施している。7月初めの現時点では、7月末の要件定義完了に向けて、計画どおり活動を進めている状況である。
本プロジェクトの開発メンバーは、現行の取引管理システムの開発担当者が中心であり、A社システム部の課長であるB氏が本プロジェクトのプロジェクトマネージャ(PM)である。B氏は、以前は業務部門に所属しており、取引管理システムの過去の改修で、要件確定後に顧客の利便性向上という顧客価値の創出につながる機能の要件変更をシステム部に要求したことがあった。しかしながら、業務部門から定量的な効果の提示がなかったので、システム部は対応がリリース時期に間に合わないことを懸念し、要件変更を受け入れなかったことから、顧客価値の創出が実現できなかった。このような経緯があり、業務部門は顧客価値の創出を実現するシステム開発を行うために、システム部内にも顧客価値の創出を考えられる組織風土を醸成していく必要があると考えた。その一環として、昨年度B氏をシステム部に異動させた。
〔法改正への対応〕
来年4月初めから施行される商品取引に関わる法改正の内容が、本年6月末に公開された。法改正の内容は二つあり、一つは、商品取引に関わる本人確認の扱いを厳格化するもの(以下、規制強化という)で、全ての取引事業者は来年4月初めから遵守しなければならない。もう一つは、現在規制されている一部の決済方法を可能とするもの(以下、規制緩和という)で、取引事業者の判断で来年4月初め以降の任意の時期に導入できる。この規制緩和は、A社の顧客価値の創出につながるものである。A社経営層は、必要な追加予算は妥当性を評価して承認することを前提に、4月初めのハードウェアの更改に対応する取引管理システムの改修と規制強化への対応は必達とすること、規制緩和にも極力早期に対応することをシステム部に指示した。
システム部のC部長は、本プロジェクトのリリース時期と法改正への対応が同一時期となること、及び法改正の影響を受けるシステムは取引管理システムであることから、法改正への対応を本プロジェクトの要件に追加することにした。システム部には、システム障害の防止や期限厳守などの“QCD遵守”の方針があり、C部長はこの方針に沿った計画変更の検討をB氏に指示した。B氏が影響を調査したところ、規制強化への対応は、機能の一部を制限することで実現できるので、現在の本プロジェクトの開発メンバーの稼働が増えてコスト増にはなるが、追加予算が承認されればQCDを遵守して対応できる見通しとなった。一方で、規制緩和への対応は、A社の顧客価値の創出につながるものではあるが、現在の本プロジェクトの開発メンバーだけでは対応できず、特に業務部門の協力が不可欠である。B氏は検討結果を報告し、C部長は、“現状では規制強化への対応までを計画変更の対象とすべき”との認識を示した。
C部長への報告後、業務部門の役員であり、B氏の元上司だったD常務からB氏に連絡があり、他社に先行して規制緩和へ対応し、顧客の利便性向上を実現することが顧客価値の創出に必要であり、十分な追加予算の承認を受けて法改正の施行時期に対応すべきであるとの思いが伝えられた。D常務の話を受けてB氏は、規制緩和への対応は、業務部門が重視する顧客価値の創出につながるものと理解したが、C部長による規制緩和への対応を含む計画変更の了承が必要である。B氏は、システム部での検討状況をD常務に報告した上で、業務部門の目指すシステム開発を実現する好機と捉えて、D常務に次の事項の検討を依頼した。
・規制緩和への対応の追加予算の確保について、経営会議での承認を得るために、①業務部門に、ある事項の実施を指示してもらいたい。
・顧客価値の創出は本プロジェクトの開発メンバーだけでは実現できないので、新たに業務部門のメンバーが主体的にプロジェクトへ参加して、②顧客価値の創出に必要となる役割を果たすように動機付けしてもらいたい。
・プロジェクトの責任者として、D常務にプロジェクトオーナーになってもらいたい。
〔プロジェクトの計画変更〕
B氏は、③本プロジェクトの目標には、これまでシステム部が重視していたQCD遵守の目標だけではなく、業務部門が重視する目標も含める必要があるとC部長に提案した。C部長もこの提案に理解を示したものの、“業務部門の重視する目標の達成は、業務部門がプロジェクトの責任部署となり、その下でシステム部がQCDを遵守する責任分担でなければ難しい”との意見だった。そこでB氏は、規制緩和への対応を含めた計画変更をするに当たり、先の依頼事項への対応も含めて、④D常務がプロジェクトオーナーとなって業務部門が責任をもつことを、D常務からC部長に説明してもらい、概算で十分な予備費を含む追加予算を見積もってD常務に報告した。
D常務は、法改正の施行時期に合わせて規制緩和に対応することを目標に本プロジェクトの計画を変更することを、追加予算とその費用対効果を含めて経営会議で説明し、承認を得た。これを受けて、B氏は本プロジェクトの計画変更の検討に着手した。
〔スケジュールの作成とリスクへの対応〕
B氏は、業務部門からも新たなメンバーがプロジェクトに参加し、業務部門としての役割を果たす意思があることを確認した。B氏は、取引管理システムのハードウェアの更改対応の改修、規制強化への対応、及び規制緩和への対応に関して、取引管理システムのハードウェアの更改対応の改修と規制強化への対応の開発スコープ(以下、スコープSという)と、規制緩和への対応の開発スコープ(以下、スコープTという)を定義した。その上で、スコープSとスコープTの開発を並行して進めることにした。
スコープSのうちスコープTの開発の影響を受けると考えられる部分を検討した上で、影響を受けないと考えられる部分の開発を先行して進めるスケジュールを作成したが、現在の開発メンバーで対応できる作業量には収まらず、法改正の施行時期に合わせたリリースの見通しが立たなかった。
そこで、スケジュール短縮策として、作成したスケジュールのクリティカルパス上のタスクに追加のメンバーを投入することによって、法改正の施行時期に合わせてリリースするスケジュールを検討した。また、C部長から、各タスクの担当者に作業期間を見積もらせると、担当者はタスクを確実に完了させようとして、作業期間にバッファを多く見込みがちなので、注意してバッファを管理しスケジュールを見直すようにとのアドバイスがあった。
B氏は、十分な追加予算がありコスト増となるリスクには対応できるので、このスケジュールで作業を実施する際のコスト増以外のリスクを特定し、対応策を検討した。まず、⑤スコープSのうちスコープTの開発の影響を受けないと考えられる部分の開発を先行して進めることに起因するリスクを特定した。次に、スケジュール短縮策において、⑥プロジェクトメンバーを追加することに起因するリスクを特定した。その上で、B氏は、進捗遅延のリスクへの対応策としてスケジュールバッファを設定することにしたが、C部長からのアドバイスを受けて、⑦スケジュールバッファの設定方法を工夫した。さらに、これらの対応策を実行しても⑧スコープTの開発がスケジュールどおりに進まない場合に備えたコンティンジェンシー計画を作成して、D常務と合意することにした。B氏は、これらの計画をC部長に説明し、さらに、プロジェクトオーナーであるD常務の了承を得て、プロジェクト計画を変更した。
設問1:〔法改正への対応〕について答えよ。
設問1(1)
問題文を見る本文中の下線①について、B氏が、D常務から業務部門に実施を指示してもらいたいと考えた事項は何か。25字以内で答えよ。
模範解答
規制緩和に対応する場合の定量的な効果算出
解説
解答の導き方
-
まず、下線①は、規制緩和への対応に必要な追加予算について、経営会議で承認を得るために業務部門へ指示してもらう事項です。したがって、開発作業そのものではなく、予算の妥当性を説明するために必要な情報を考えます。
-
本文では、経営層が「必要な追加予算は妥当性を評価して承認する」としています。追加予算を認めてもらうには、規制緩和に対応することでどのような効果が得られるのかを、費用に見合うものとして説明できる必要があります。
-
その根拠は、過去の改修で業務部門が要件変更を求めた際、「業務部門から定量的な効果の提示がなかった」ため、システム部が要件変更を受け入れなかったという経緯です。今回は、顧客価値の創出につながる規制緩和への対応について、効果を具体的な数値で示す必要があります。
-
したがって、D常務から業務部門に指示してもらう事項は、規制緩和に対応した場合の効果を定量的に算出することです。追加予算の額を算出することではなく、対応によって得られる効果を数値で示す点が重要です。
誤りやすいポイント
- 追加予算の見積りや確保そのものを答えにしないようにします。問われているのは、追加予算の承認に向けて業務部門に実施させる事項です。
- 規制強化への対応ではなく、顧客価値の創出につながる規制緩和への対応についての効果を考えます。
- 「顧客の利便性を向上させる」だけでは、効果を定量的に示すことになりません。本文の過去の経緯を踏まえ、効果を数値で算出するところまで答える必要があります。
FAQ
Q: なぜ業務部門に効果の算出を依頼するのですか。
A: 規制緩和による顧客価値や業務上の効果を説明し、追加予算の妥当性を判断してもらうためです。
A: 規制緩和による顧客価値や業務上の効果を説明し、追加予算の妥当性を判断してもらうためです。
Q: 開発コストを算出すれば、追加予算の承認に十分ですか。
A: いいえ。コストだけでなく、規制緩和への対応によって得られる効果も示し、費用対効果を評価できるようにする必要があります。
A: いいえ。コストだけでなく、規制緩和への対応によって得られる効果も示し、費用対効果を評価できるようにする必要があります。
Q: 効果は「顧客の利便性向上」と表現すればよいですか。
A: それだけでは定量的な説明になりません。顧客の利便性向上などの効果を、数値で評価できる形にすることが問われています。
A: それだけでは定量的な説明になりません。顧客の利便性向上などの効果を、数値で評価できる形にすることが問われています。
関連キーワード: 費用対効果、定量評価、追加予算、顧客価値、予算承認
設問1(2)
問題文を見る本文中の下線②について、B氏が、D常務から動機付けしてもらいたいと考えた、顧客価値の創出に必要となる業務部門のメンバーが果たす役割は何か。25字以内で答えよ。
模範解答
規制緩和を顧客の利便性向上につなげる役割
解説
解答の導き方
-
問われているのは、業務部門のメンバーが顧客価値の創出に向けて果たす役割です。プロジェクトに参加すること自体や、追加予算を確保することではありません。
-
本文では、規制緩和によって「現在規制されている一部の決済方法」が可能になり、A社の顧客価値の創出につながるとされています。つまり、制度上可能になった決済方法を、顧客にとっての価値へ結び付けることが重要です。
-
さらにD常務は、他社に先行して規制緩和に対応し、「顧客の利便性向上を実現すること」が必要だと述べています。このことから、業務部門のメンバーには、規制緩和への対応を顧客の利便性向上につなげる役割が期待されています。
-
また、本文には、規制緩和への対応には「特に業務部門の協力が不可欠」とあります。技術的に規制緩和へ対応するだけでなく、業務面から顧客価値を実現することが、業務部門のメンバーに求められる役割です。
誤りやすいポイント
- 「プロジェクトに主体的に参加すること」だけでは、顧客価値を生み出すために何をするのかが示せていません。
- 「規制緩和に対応すること」だけでは、対応によって実現する顧客価値まで答えられていません。
- 顧客価値の具体的な内容は、本文にある「顧客の利便性向上」です。システムの品質向上やコスト削減に置き換えないようにしましょう。
FAQ
Q: 業務部門のメンバーに求められているのは、システムの開発作業ですか?
A: 設問の焦点は開発作業ではなく、規制緩和への対応を顧客の利便性向上に結び付ける役割です。
A: 設問の焦点は開発作業ではなく、規制緩和への対応を顧客の利便性向上に結び付ける役割です。
Q: なぜ業務部門の協力が必要なのですか?
A: 規制緩和をどのように顧客価値へつなげるかを検討し、業務面から実現する必要があるためです。本文でも、規制緩和への対応には業務部門の協力が不可欠とされています。
A: 規制緩和をどのように顧客価値へつなげるかを検討し、業務面から実現する必要があるためです。本文でも、規制緩和への対応には業務部門の協力が不可欠とされています。
関連キーワード: 顧客価値、ステークホルダー、要件定義、プロジェクトマネジメント
設問2:〔プロジェクトの計画変更〕について答えよ。
設問2(1)
問題文を見る本文中の下線③について、B氏が、本プロジェクトの目標には、これまでシステム部が重視していたQCD遵守の目標だけではなく、業務部門が重視する目標も含める必要があるとC部長に提案した狙いは何か。35字以内で答えよ。
模範解答
顧客価値の創出を目標とするシステム開発を実現すること
解説
解答の導き方
-
まず、B氏が業務部門に所属していた頃の経緯に注目します。過去の改修では、要件確定後に顧客の利便性を高める機能が求められましたが、効果が定量的に示されず、システム部はリリース時期への影響を懸念して受け入れませんでした。その結果、「顧客価値の創出が実現できなかった」とあります。
-
この経験から、業務部門は、顧客価値を生み出すシステム開発を行うには、システム部にも顧客価値を考える組織風土が必要だと考えていました。つまり、本プロジェクトでも、システム部が従来重視してきたことだけを目標にするのでは不十分です。
-
今回の法改正では、規制強化への対応が必達である一方、規制緩和への対応は、本文で「A社の顧客価値の創出につながるもの」とされています。規制緩和に対応するには、システム部だけでなく業務部門の協力も必要です。
-
そこでB氏は、QCD遵守を目標から外すのではなく、それに加えて業務部門が重視する目標もプロジェクトの目標に含めようと提案しました。狙いは、QCDを守ることだけにとどまらず、顧客価値の創出を目指すシステム開発を実現することです。
誤りやすいポイント
- 法改正への対応やリリース時期の厳守だけを狙いとしないようにします。これらはプロジェクトの条件や対応事項であり、下線③の提案の狙いそのものではありません。
- QCD遵守を不要とする提案だと捉えないようにします。本文では、これまでの目標に業務部門が重視する目標を加えることが提案されています。
- D常務をプロジェクトオーナーとし、業務部門が責任をもつことと、下線③の狙いを混同しないようにします。前者は責任体制に関する話であり、下線③はプロジェクトで目指す成果に関する話です。
FAQ
Q: 業務部門が重視する目標とは、具体的に何を指しますか?
A: この問題では、規制緩和への対応を通じて顧客の利便性を高め、顧客価値を生み出すことです。
A: この問題では、規制緩和への対応を通じて顧客の利便性を高め、顧客価値を生み出すことです。
Q: QCD遵守の目標は、なぜ残す必要があるのですか?
A: システム障害の防止や期限厳守なども、プロジェクトの重要な目標だからです。顧客価値の創出と両立させるため、QCD遵守に加えて業務部門の目標を含めます。
A: システム障害の防止や期限厳守なども、プロジェクトの重要な目標だからです。顧客価値の創出と両立させるため、QCD遵守に加えて業務部門の目標を含めます。
関連キーワード: 顧客価値、プロジェクト目標、QCD、ステークホルダー、費用対効果
設問2(2)
問題文を見る本文中の下線④について、B氏が、D常務がプロジェクトオーナーとなって業務部門が責任をもつことを、D常務からC部長に説明してもらった狙いは何か。30字以内で答えよ。
模範解答
責任部署が業務部門であるとC部長に理解してもらうこと
解説
解答の導き方
この設問は、D常務からC部長に説明してもらうことで、どのような認識をC部長に持ってもらおうとしたのかを問うています。
本文では、B氏が業務部門の重視する目標もプロジェクト目標に含めることを提案し、C部長はその提案に理解を示しています。ただし、C部長は「業務部門がプロジェクトの責任部署となり、その下でシステム部がQCDを遵守する責任分担」でなければ、業務部門が重視する目標の達成は難しいと考えています。
そこでB氏は、計画変更に当たり、D常務がプロジェクトオーナーとなり、業務部門が責任をもつことをD常務からC部長に説明してもらうことにしました。これは、C部長が示した条件に沿って、業務部門がプロジェクトの責任部署であることをC部長に理解してもらうためです。
誤りやすいポイント
- 追加予算の承認を得ることと混同しないようにします。本文では、D常務が追加予算と費用対効果を経営会議で説明し、承認を得た後に計画変更の検討に着手しています。
- D常務にプロジェクトオーナーになってもらうことだけを狙いと考えないようにします。設問が問うているのは、その役割と合わせて業務部門が責任をもつ体制をC部長に説明する狙いです。
- 業務部門がシステム部のQCD遵守の責任を引き受ける、という意味ではありません。本文では、業務部門が責任部署となり、その下でシステム部がQCDを遵守する責任分担とされています。
FAQ
Q: C部長は、業務部門の目標をプロジェクト目標に含めることに反対していたのですか。
A: いいえ。提案には理解を示していますが、その目標を達成するには業務部門が責任部署となる必要があると考えていました。
A: いいえ。提案には理解を示していますが、その目標を達成するには業務部門が責任部署となる必要があると考えていました。
Q: D常務に説明してもらうことは、C部長に計画変更の承認を求めることですか。
A: ここで問われている狙いは、責任部署が業務部門である体制をC部長に理解してもらうことです。計画変更は、経営会議で追加予算などの承認を得た後に検討されています。
A: ここで問われている狙いは、責任部署が業務部門である体制をC部長に理解してもらうことです。計画変更は、経営会議で追加予算などの承認を得た後に検討されています。
関連キーワード: プロジェクトオーナー、責任分担、プロジェクト目標、ステークホルダー管理、組織ガバナンス
設問3:〔スケジュールの作成とリスクへの対応〕について答えよ。
設問3(1)
問題文を見る本文中の下線⑤について、B氏が特定した、スコープSのうちスコープTの開発の影響を受けないと考えられる部分の開発を先行して進めることに起因するリスクは何か。20字以内で答えよ。
模範解答
先行実施した開発作業の手戻り
解説
解答の導き方
この設問で問われているのは、スコープSの一部を先行して開発すること自体に伴うリスクです。
本文では、スコープSのうち「スコープTの開発の影響を受けないと考えられる部分」を先行して開発するとしています。ここで重要なのは、「影響を受けない」と断定しているのではなく、「受けないと考えられる」と判断している点です。スコープSとスコープTの開発を並行して進めるため、スコープTの開発が進んだ後に、当初は影響しないと考えていた部分にも関連があると分かる可能性があります。
その場合、先行して完成させたスコープSの開発内容を修正し、作業をやり直すことになります。したがって、リスクは先行実施した開発作業の手戻りです。スケジュールの遅延は、その手戻りが発生した場合に生じ得る影響であり、問われているリスクそのものとは区別します。
誤りやすいポイント
- スコープTの開発が遅れることを、直接のリスクとして答えてしまうことがあります。設問は、スコープSの一部を先行して進めることに起因するリスクを尋ねています。
- 「影響を受けないと考えられる」を「影響を受けないことが確定している」と読み違えないようにします。見込みに基づく判断なので、後から影響が判明する可能性があります。
- 手戻りによるスケジュール遅延ではなく、まずは開発済みの作業をやり直すことがリスクだと捉えます。
FAQ
Q: 影響を受けないと判断して先行したのに、なぜ手戻りが起きるのですか?
A: 判断時点では分からなかったスコープTとの関係が、開発の進展によって判明する可能性があるためです。
A: 判断時点では分からなかったスコープTとの関係が、開発の進展によって判明する可能性があるためです。
Q: 手戻りによるスケジュール遅延もリスクではありませんか?
A: 遅延は手戻りが発生した場合の影響です。この設問では、先行開発に起因するリスクとして、作業の手戻りを答えます。
A: 遅延は手戻りが発生した場合の影響です。この設問では、先行開発に起因するリスクとして、作業の手戻りを答えます。
Q: これは要件変更のリスクを答える問題ですか?
A: 要件変更に限りません。スコープTとの依存関係などが後から判明し、先行した開発作業を修正・やり直すことがポイントです。
A: 要件変更に限りません。スコープTとの依存関係などが後から判明し、先行した開発作業を修正・やり直すことがポイントです。
関連キーワード: リスク管理、並行開発、手戻り、スケジュール管理、スコープ管理
設問3(2)
問題文を見る本文中の下線⑥について、B氏が特定した、プロジェクトメンバーを追加することに起因するリスクは何か。25字以内で答えよ。
模範解答
追加メンバーの知識不足に起因する品質不足
解説
解答の導き方
-
下線⑥では、スケジュール短縮のためにプロジェクトメンバーを追加することから生じるリスクを問われています。追加する目的は、クリティカルパス上のタスクに人員を投入し、作業を早めることです。
-
ただし、メンバーを増やせば必ず作業が効率化するとは限りません。追加されたメンバーが取引管理システムや担当作業について十分な知識をもっていない場合、作業内容の理解不足や誤りが生じ、成果物の品質が低下するおそれがあります。
-
したがって、特定すべきリスクは、追加メンバーの知識不足によって品質が不足することです。
誤りやすいポイント
- 「メンバーを追加すると、説明や調整に時間がかかる」という点だけを答えると、追加要員に起因するリスクの一つではありますが、模範解答が示す品質面のリスクを捉えられていません。
- 「作業期間が延びる」と答えるのも不適切です。設問はメンバー追加によるスケジュール短縮策そのものではなく、その策に伴って生じるリスクを尋ねています。
- 「品質不足」だけでは原因が不足します。追加メンバーの知識不足が原因であることまで示す必要があります。
FAQ
Q: メンバーを追加することは、必ず品質低下につながりますか?
A: 必ずではありません。ただし、追加メンバーが対象システムや作業内容を十分に理解していないまま作業すると、誤りや手戻りが増えて品質が不足するリスクがあります。
A: 必ずではありません。ただし、追加メンバーが対象システムや作業内容を十分に理解していないまま作業すると、誤りや手戻りが増えて品質が不足するリスクがあります。
Q: このリスクへの対応としては、何が考えられますか?
A: 作業手順や設計内容を共有し、必要な説明やレビューを行うことが考えられます。追加メンバーが作業に必要な知識を得られるようにすることが重要です。
A: 作業手順や設計内容を共有し、必要な説明やレビューを行うことが考えられます。追加メンバーが作業に必要な知識を得られるようにすることが重要です。
Q: この設問で、スケジュール遅延を答えないのはなぜですか?
A: 問われているのは、メンバー追加によって生じるリスクです。追加メンバーの知識不足が作業の誤りや手戻りを招き、品質不足につながるという因果関係を示すのが適切です。
A: 問われているのは、メンバー追加によって生じるリスクです。追加メンバーの知識不足が作業の誤りや手戻りを招き、品質不足につながるという因果関係を示すのが適切です。
関連キーワード: リスク特定、品質管理、レビュー、知識共有、スケジュール短縮
設問3(3)
問題文を見る本文中の下線⑦について、B氏は、スケジュールバッファの設定方法をどのように工夫したのか。35字以内で答えよ。
模範解答
各タスクにバッファはもたせずプロジェクトバッファをもつ。
解説
解答の導き方
-
問われているのは、スケジュールの遅延に備えるバッファを、個々のタスクとプロジェクト全体のどちらに持たせるかです。
-
C部長は、担当者が「作業期間にバッファを多く見込みがち」なので、バッファを注意して管理するよう助言しています。つまり、各担当者がタスクごとに余裕を加えると、バッファがタスクの中に隠れ、プロジェクト全体としてどれだけ余裕があるのか把握しにくくなります。
-
そこで、各タスクの作業期間には個別のバッファを含めず、遅延に備える余裕をプロジェクト全体のバッファとしてまとめます。プロジェクトバッファをまとめて管理すれば、その消費状況を確認しながら、リリース時期を守るための判断がしやすくなります。
誤りやすいポイント
- タスクごとに余裕期間を残したまま、さらにプロジェクトバッファを加えることです。バッファを二重に見込むことになり、スケジュールが長くなります。
- 「各タスクにバッファをもたせない」を「遅延に備える余裕を全く設けない」と解釈することです。余裕はプロジェクト全体のバッファとして確保します。
- バッファをどこに設けるかではなく、追加メンバーの投入やタスクの短縮方法を答えることです。この設問は、バッファの設定方法を問うています。
FAQ
Q: 各タスクの見積りに余裕を含めないと、遅延が起きたときに対応できませんか?
A: 遅延に備える余裕は、タスクごとではなくプロジェクト全体のバッファとして確保します。バッファの消費を全体で管理できる点が重要です。
A: 遅延に備える余裕は、タスクごとではなくプロジェクト全体のバッファとして確保します。バッファの消費を全体で管理できる点が重要です。
Q: プロジェクトバッファは、タスクごとのバッファを単純に足し合わせたものですか?
A: この設問で問われているのは、タスクごとにバッファを持たせず、プロジェクト単位でバッファを管理する方法です。具体的な算出方法までは示されていません。
A: この設問で問われているのは、タスクごとにバッファを持たせず、プロジェクト単位でバッファを管理する方法です。具体的な算出方法までは示されていません。
Q: バッファがあれば、タスクの進捗を確認しなくてもよいですか?
A: いいえ。バッファを設けるだけではなく、どの程度消費されているかを確認し、必要に応じてスケジュールを見直すことが大切です。
A: いいえ。バッファを設けるだけではなく、どの程度消費されているかを確認し、必要に応じてスケジュールを見直すことが大切です。
関連キーワード: スケジュールバッファ、プロジェクトバッファ、クリティカルパス、バッファ管理
設問3(4)
問題文を見る本文中の下線⑧について、B氏が、対応策を実行してもスコープTの開発がスケジュールどおりに進まない場合に備えてD常務と合意するコンティンジェンシー計画とはどのようなものか。30字以内で答えよ。
模範解答
規制緩和への対応のリリース時期を延期する。
解説
解答の導き方
-
まず、法改正への対応を、期限が必須のものと導入時期を選べるものに分けます。本文では、規制強化は「全ての取引事業者は来年4月初めから遵守しなければならない」とされています。一方、規制緩和は「取引事業者の判断で来年4月初め以降の任意の時期に導入できる」とされています。
-
開発スコープも分けられています。スコープSはハードウェアの更改対応の改修と規制強化への対応であり、スコープTは規制緩和への対応です。したがって、スコープTの開発が遅れても、期限を守らなければならないスコープSの対応まで遅らせるのは適切ではありません。
-
B氏は、スケジュール短縮策やスケジュールバッファを設定しても、スコープTの開発が予定どおりに進まない場合に備えています。その場合も規制強化への対応を期限内に実施できるよう、導入時期を選べる規制緩和への対応だけを後に回す計画が適切です。
-
そのため、コンティンジェンシー計画では、規制緩和への対応のリリース時期を延期します。これは規制緩和への対応を取りやめるのではなく、開発が遅れた場合に限ってリリースを後ろ倒しにし、必須の対応を優先する考え方です。
誤りやすいポイント
- 規制強化と規制緩和を同じ期限の対応として扱わないようにします。規制強化には期限がありますが、規制緩和は導入時期を選べます。
- プロジェクト全体のリリースを延期すると考えないようにします。延期する対象はスコープT、つまり規制緩和への対応です。
- 規制緩和への対応を中止する計画としないようにします。問われているのは、開発が予定どおりに進まない場合のリリース時期の調整です。
FAQ
-
Q: スコープTの開発が遅れたら、プロジェクト全体のリリースも延期しますか?
A: いいえ。規制強化への対応には期限があるため、スコープSの対応を優先し、規制緩和への対応のリリース時期を後にします。 -
Q: 規制緩和への対応は、遅れても問題ないのですか?
A: 導入時期を任意に決められるため、規制強化への対応を遅らせるよりも、規制緩和への対応のリリースを延期する計画が適切です。 -
Q: リリース時期を延期するのは、リスク対応策ではなくコンティンジェンシー計画なのですか?
A: 予定した対策を実施してもスコープTの開発が遅れた場合に備えて、あらかじめ実行する対応を決めているため、コンティンジェンシー計画に当たります。
関連キーワード: コンティンジェンシー計画、スコープ管理、リリース計画、スケジュールリスク



