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応用情報技術者 2010年 春期 午前203


問題文

多数のクライアントが、LANに接続された1台のプリンタを共同利用するときの印刷要求から印刷完了までの所要時間を、待ち行列理論を適用して見積もる場合について考える。プリンタの運用方法や利用状況に関する記述のうち,M/M/1の待ち行列モデルの条件に反しないものはどれか。

選択肢

一部のクライアントは、プリンタの空き具合を見ながら印刷要求をする。
印刷の緊急性や印刷量の多少にかかわらず、先着順に印刷する。(正解)
印刷待ち文書の総量がプリンタのバッファサイズを超えるときは、一時的に受付を中断する。
一つの印刷要求から印刷完了までの所要時間は、印刷の準備に要する一定時間と、印刷量に比例する時間の合計である。

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M/M/1待ち行列条件【午前2解説】

正解の理由

印刷ジョブが到着する過程がポアソンで、サービス時間が独立で指数分布に従い、単一のサーバで先着順(FCFS)かつ待ち行列容量が無限である、というM/M/1の前提条件に照らすと、サービス順序として先着順を明示する選択肢が該当します。したがって (印刷の緊急性や印刷量にかかわらず先着順に印刷する)はM/M/1の前提に反しません。先着順(FCFS)はM/M/1で許容されるサービス順序の代表例であり、他の必要条件(到着のポアソン性、サービス時間の指数分布、単一サーバ、無限バッファなど)とも矛盾しません。

解法ステップ

  1. M/M/1 の基本前提を列挙する
    • 到着過程がポアソン過程(到着間隔が独立で指数分布)であること
    • サービス時間が独立で指数分布であること(メモリーレス性)
    • サーバは1台であること
    • サービス順序は FCFS を含め任意(ただしプリエンプティブ等は別考慮)
    • 待ち行列容量は無限であること(有限なら別モデル)
  2. 各選択肢が上の前提のどれと矛盾するかを検討する
  3. 矛盾しないものを選ぶ(本問では FCFS を示す
  4. 必要ならモデルの別名(例:有限バッファなら M/M/1/K)を補足する

選択肢別の誤答解説

  • ア: 一部のクライアントが「空き具合を見てから」要求を出す
    → クライアントの到着がシステム状態に依存するため、外部到着過程が定常のポアソン過程であるという前提を破る可能性があります。到着率が状態依存(状態により到着が遅延・抑制)だと、独立同分布の到着間隔(ポアソン性)が成り立たなくなり、M/M/1の仮定に反します。
  • : 緊急性や量にかかわらず先着順
    → FCFS(先着順)はM/M/1で想定可能なサービス規則の一つです。到着やサービスの分布には影響を与えないため、前提に反しません。
  • ウ: 待ち量がバッファを超えると受付を中断する
    → これは待ち行列容量が有限であることを意味します。M/M/1は無限待ち行列を仮定するため、有限バッファがあると仮定が崩れ、代わりに M/M/1/K(または損失系の M/M/1/K/K など)の別モデルになります。外部からの到着プロセス自体がポアソンであるかどうかは別問題であり、受付中断が外部到着過程そのものをポアソンでなくするわけではありません(外来到着はポアソンのまま)。しかし「受理できる容量に制限がある」という点で M/M/1 の無限バッファ仮定に反します。
  • エ: サービス時間が「一定時間+印刷量に比例する時間」の合計
    → サービス時間が定数と仕事量に比例する部分の和で表されると、一般にサービス時間の分布は指数分布(メモリーレス)にはなりません。たとえ印刷量が指数分布に従ったとしても、定常項(一定時間)を加えるとメモリーレス性は失われます。したがって指数サービス時間の仮定に反し、M/M/1とはみなせません。

よくある誤解

  • 受付を一時停止すると外部到着過程がポアソンでなくなる
    → 誤り。外部からの印刷要求がポアソン過程であれば、受付を止めても外部到着そのものはポアソンのままです。ただし「受理可能なジョブ数が有限」という点で、M/M/1(無限バッファ)の仮定に反し、適切なモデルは M/M/1/K 等になります。
  • 「先着順=必ずM/M/1適合」と考える誤り
    → FCFS 自体はM/M/1で許容されますが、到着・サービスの分布やバッファ容量など他の条件も満たす必要があります。順序だけで判断しないこと。
  • 定数部分を含むサービス時間でも「十分ランダムなら指数に近い」と考える誤り
    → 実務で近似する場合はあるものの、M/M/1 の理論的条件は厳密に指数分布でのメモリーレス性です。定数項があると理論上は指数分布ではないため別モデル扱いになります。

補足コラム

M/M/1モデルの代表的な性能式(到着率を 、サービス率を とする、安定条件 ):
  • 系内平均ジョブ数:
  • 待ち行列の平均ジョブ数:
  • 系内滞在時間(平均):
  • 待ち時間(平均):
有限バッファがある場合は M/M/1/K(Kは系の最大許容量)となり、到着の一部が遮断される(ブロックされる)ため到着の受理率や平均滞在時間の式は変わります。

FAQ

Q: 「印刷量が指数分布ならエは許されるのか?」
A: いいえ。たとえ印刷量が指数分布でも、一定の準備時間を足すとサービス時間全体は指数分布のメモリーレス性を失います。M/M/1では服務時間は純粋に指数分布である必要があります。
Q: 「クライアントが印刷中の状態をポーリングしてから送る場合はどう扱う?」
A: 到着がシステム状態に依存するため、到着過程の独立・定常性(ポアソン性)が崩れ、M/M/1の仮定には合いません。状態依存到着は別のモデルで扱います。
Q: 「短時間だけ受付中断する程度は無視してよいか?」
A: 近似的に扱う場合は工学的判断で無視できることもありますが、理論的には無限バッファ仮定が破られるため厳密なM/M/1解析は不適切です。

関連キーワード: 待ち行列理論、ポアソン過程、指数分布、FCFS、M/M/1/K、サービス率、到着率、メモリーレス性
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