応用情報技術者 2013年 春期 午前2 問79
問題文
製造業者の責任に関して、製造物責任法(PL法)に定められているものはどれか。
選択肢
ア:顧客の財産に関する損害については、製造業者は製造物を顧客に引き渡した時から永久に損害賠償責任を負う。
イ:製造物の欠陥原因が部品メーカの製造した部品であった場合、完成品メーカの設計どおりに製造し納品した部品であっても、部品メーカに損害賠償責任がある。
ウ:製造物を顧客に引き渡した時における科学又は技術水準では発見できない内容の欠陥であれば、その製造業者の損害賠償責任は問われない。(正解)
エ:製造物を輸入して販売している販売業者は、製造業者ではないので、その製造物によって顧客が財産上の損害を被っても、損害賠償責任は問われない。
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開発リスク免責【午前2解説】
正解の理由
選択肢のうち、ウが正しいのは、製造物責任法(PL法)が「当該製造物を顧客に引き渡した時点における科学又は技術の水準において発見し得なかった欠陥」については、製造業者に対する責任を免れる(いわゆる開発リスク免責)仕組みを認めているためです。法的にはこれは完全な無条件の免責ではなく、免責を主張する側(通常は製造業者)が当該欠陥が当時の科学・技術水準では発見不可能であったことを立証する必要がある点が重要です。つまり、免責の成立要件(時間点、発見可能性、立証責任)が満たされる場合に限り責任を問われません。
解法ステップ
- 設問のキーワードを確認:「責任を問われない」「部品メーカー」「輸入販売業者」「永久に」など。
- PL法の基本構造を思い出す:厳格責任(過失不問)が原則だが、例外(開発リスク免責など)や提供者の範囲が定められている。
- 各選択肢について、法の趣旨と具体的な例外・立証負担と照合する。
- 「発見可能性に基づく免責」を示す記述が選択肢にあるかを探し、立証責任の有無も確認して選択する。
- 結果として、開発リスク免責を述べる ウ を選ぶ。
選択肢別の誤答解説
-
ア:顧客の財産に関する損害については、製造業者は製造物を顧客に引き渡した時から永久に損害賠償責任を負う。
- 誤り。PL法は無制限の永久責任を定めているわけではありません。PL法には請求権の消滅時効や時効に準じる制限(発見時からの請求期間や引渡しからの一定期間など)や適用範囲の要件があります(具体的な年数等はここでは示しません)。「永久に負う」という断定は誤りです。
-
イ:部品メーカの製造した部品が欠陥原因であった場合、完成品メーカの設計どおりに製造し納品した部品であっても、部品メーカに損害賠償責任がある。
- 単純化しすぎた記述で誤り。部品が欠陥原因であれば部品メーカーに責任が及ぶことはありますが、設計どおりに製造したことが事実であれば「設計欠陥」の責任は設計者(完成品メーカーなど)に帰することがあるため、部品メーカーが必ず責任を負うとは限りません。実務上は、被害者に対しては完成品メーカー等の「提供者」がまず責任を問われることが多く(被害者にとっての救済優先)、その後で完成品メーカーが部品メーカーに求償(求償権・回収)する形になることもあります。つまり、責任の存否は事情(原因の帰属、設計か製造か、表示・警告の有無等)によって決まるため、選択肢は一律の真とは言えません。
-
ウ:製造物を顧客に引き渡した時における科学又は技術水準では発見できない内容の欠陥であれば、その製造業者の損害賠償責任は問われない。
- 正しい。これがPL法上の「開発リスク(開発免責)」です。ただし法的性質としては免責(立証して初めて適用される防御)であり、免責を主張する側に当該事実を立証する責任がある点を忘れてはいけません。
-
エ:輸入して販売している販売業者は、製造業者ではないので、その製造物によって顧客が財産上の損害を被っても、損害賠償責任は問われない。
- 誤り。輸入販売者や販売業者も、一定の条件下では「提供者」としてPL法上の責任を負います。メーカー(製造者)が特定できない場合や輸入者が国内における実質的な提供者である場合など、被害者救済の観点から販売業者・輸入業者にも責任が及ぶことがあります。
よくある誤解
- 「開発リスク免責=無条件の免責」と誤解する
- 実際は免責事由を主張する側に、当該欠陥が当時の技術水準で発見不可能であったことを立証する責任(立証責任)がある点を見落としやすい。
- 「部品メーカーが欠陥の原因なら必ず責任がある」と考える
- 実務では完成品メーカーがまず被害者に対して責任を負うケースが多く、部品メーカーの責任は原因の帰属や設計・製造の区分、求償関係に基づく。
- 「輸入販売者は常に無責任」と誤認する
- 販売者・輸入者も提供者として責任を負うことがあるため、必ずしも免責ではない。
補足コラム
- 立証の実務:開発リスク免責を立証するためには、当時の学術文献、業界標準、技術基準、専門家の意見書などを用いて「その時点では発見できなかった」ことを示す必要があります。裁判では専門的論証が中心となるため、証拠収集が重要です。
- 責任の配分:被害者救済を優先する観点から、被害者はまず提供者(完成品メーカーや販売業者)に請求し、提供者は内部的には原因者(部品メーカーなど)に対して求償することが通常です。したがって、被害者にとって救済可能性と、当事者間の責任配分は区別して理解する必要があります。
- PL法の位置づけ:PL法は製造物の欠陥による被害救済を目的とする民事法で、過失責任ではなく製造物の欠陥に基づく責任を厳格に扱う点が特徴です。一方で例外(開発リスク等)や提供者の範囲が定められており、単純な“無制限責任”ではありません。
FAQ
Q1: 開発リスク免責の立証は誰がするのですか?
A1: 免責を主張する製造業者が、当該欠陥が引渡時点で科学・技術水準から発見し得なかったことを立証する必要があります。
A1: 免責を主張する製造業者が、当該欠陥が引渡時点で科学・技術水準から発見し得なかったことを立証する必要があります。
Q2: 部品メーカーが設計どおりに部品を作っていたら、部品メーカーは絶対に免責ですか?
A2: いいえ。設計どおりに製造した場合でも、部品自体の製造過程に欠陥があったり、表示・警告の義務を果たしていなかったりすれば責任を問われることがあります。加えて被害者に対する救済関係と当事者間の求償関係は別問題です。
A2: いいえ。設計どおりに製造した場合でも、部品自体の製造過程に欠陥があったり、表示・警告の義務を果たしていなかったりすれば責任を問われることがあります。加えて被害者に対する救済関係と当事者間の求償関係は別問題です。
Q3: 輸入販売業者はPL法で責任を免れるのですか?
A3: いいえ。輸入販売業者や販売業者も提供者として責任を負う場合があるため、一般に免責とはなりません。
A3: いいえ。輸入販売業者や販売業者も提供者として責任を負う場合があるため、一般に免責とはなりません。
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