応用情報技術者 2018年 春期 午前2 問78
問題文
製造物責任法(PL法)において、製造物責任を問われる事例はどれか。
選択肢
ア:機器に組み込まれている ROM に記録されたプログラムに瑕疵があったので、その機器の使用者に大けがをさせた。(正解)
イ:工場に配備されている制御系コンピュータのオペレーションを誤ったので、製品製造のラインを長時間停止させ大きな損害を与えた。
ウ:ソフトウェアパッケージに重大な瑕疵が発見され、修復に時間が掛かったので、販売先の業務に大混乱をもたらした。
エ:提供している IT サービスのうち、ヘルプデスクサービスが SLAを満たす品質になく、顧客から多大なクレームを受けた。
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製造物責任の適用【午前2解説】
正解の理由
選択肢の中で製造物責任法(PL法)の適用要件を満たすのは、機器に組み込まれた ROM に記録されたプログラムの瑕疵により使用者に大けがをさせた ア です。理由は次の点です。
- PL法は「製造物」(有体物)に欠陥があり、その欠陥が原因で人の生命・身体または財産に損害が生じた場合に、製造者等の賠償責任を問う制度(いわゆる無過失責任)です。1994年に制定され、1995年に施行されました。
- ROM に記録されたプログラムは、その機器の一部としての有体物(装置に組み込まれた形態)に含まれるため、当該瑕疵が機器の欠陥と評価され、身体損害(大けが)を発生させていれば PL 法の対象になります。
- 一方で、純粋な経済的損失(営業損失や業務停止による逸失利益など)は原則として PL 法の対象外です。そのためウのようなソフトウェアパッケージによる業務混乱や、エのサービス品質不良によるクレーム、あるいはイの運転操作ミスによるライン停止(操作ミスは製造物の「欠陥」によるものではない)は、PL 法の適用対象とはなりにくいです。
以上から、PL法の要件を満たすのは ア であり正解となります。
解法ステップ
- 被害の種類を確認する(身体損害/財産損害/純粋経済損失か)。
- 損害発生の原因が「製造物の欠陥」によるかを検討する(有体物の欠陥か、使用者の誤操作か、サービスの瑕疵か)。
- 欠陥が有体物(製造物)に内在しており、因果関係が立証できるかを判断する。
- 上記が満たされ、かつ身体・財産に損害が生じていれば PL 法の適用を検討する。
- 純粋経済的損失のみの場合は原則対象外である点を確認する。
この順に当てはめれば、各選択肢の適合性を素早く判断できます。
選択肢別の誤答解説
- ア: 機器に組み込まれた ROM に記録されたプログラムの瑕疵→機器の一部としての欠陥であり、身体損害が発生しているため PL 法が適用され得る。無過失責任の対象となる点を満たす。
- イ: 操作ミスによるライン停止→原因が「使用者の誤操作」であり、製造物の欠陥とは言えない。さらに主たる損害が生産停止による経済的損失であれば PL 法の対象外。
- ウ: ソフトウェアパッケージの瑕疵で販売先に業務混乱→通常は純粋な経済的損失(逸失利益等)が中心で、PL 法は原則としてこれをカバーしない。パッケージソフト自体が無体物的性格を持つため、製造物該当性は状況依存(物理媒体での提供や、ソフトが組み込まれたハードの欠陥に起因する場合は異なる)だが、本肢は経済損失中心なので不適。
- エ: ヘルプデスク等のサービス品質不良→提供されるのはサービス(無体物)であり、PL 法の「製造物」には当たらない。契約上や不法行為(民事責任)での救済が問題となるが、PL 法の適用外。
よくある誤解
- 「ソフトウェアは常に PL 法の対象外」
- 誤り。組み込みソフト(ROMや装置に密接に組み込まれたプログラム)はその装置の一部として「製造物」に含まれ得ます。ただし単体の流通ソフトやサービスは該当しにくい点を区別する必要があります。
- 「PL 法はすべての損害をカバーする」
- 誤り。PL 法は主に身体損害や物的損害を対象とし、純粋な経済的損失(営業損失・逸失利益など)は原則として対象外です。
- 「製造物責任=過失責任」
- 誤り。PL 法は無過失責任(欠陥があれば製造者責任を問える)であり、被害者は製造者の過失を立証する必要はない代わりに、欠陥→損害→因果関係を示す必要があります。
補足コラム
- 制度の成立年について:日本の製造物責任法(PL法)は1994年に制定され、1995年に施行されました。制定の目的は消費者保護の強化と製造者の製品安全性確保の促進です。PL 法は消費者の被害救済を図るため、欠陥があれば製造者に一定の責任を負わせる仕組みを提供します。
- 実務上の判断例:埋込型医療機器のファームウェア不具合で患者に死亡・重篤な傷害が生じた場合、ハードとソフトが一体の製造物として PL 法が問題になることがあります。一方、業務用アプリの不具合で取引先が損害を被った場合は、契約責任や不法行為(損害賠償)で争われ、PL 法は適用されにくいのが実情です。
- 被害救済のルート:PL 法のほか、契約上の瑕疵担保責任、民法上の不法行為責任、消費者契約法等の制度も考慮する必要があります。具体的な事案ではどの法的ルートが最も適切か、損害の性質や因果関係に基づいて選択されます。
FAQ
Q: パッケージソフトが CD-ROM 等の物理媒体で提供されていれば PL 法の対象になりますか?
A: 物理媒体で提供されている場合、形式上は有体物に含まれるため PL 法の論点になりますが、実務上は被害が身体・物的損害であるか、ソフト自体の欠陥と損害の因果関係が明確かどうかが重要です。純粋経済損失のみだと原則対象外です。
A: 物理媒体で提供されている場合、形式上は有体物に含まれるため PL 法の論点になりますが、実務上は被害が身体・物的損害であるか、ソフト自体の欠陥と損害の因果関係が明確かどうかが重要です。純粋経済損失のみだと原則対象外です。
Q: 組み込みソフトの瑕疵で第三者が死亡した場合、PL 法以外の責任追及はありますか?
A: はい。刑事責任(重大な過失致死等)や民事の不法行為責任、製造物責任に基づく請求など複数の法的手段が併存し得ます。事案により使われる法的根拠が異なります。
A: はい。刑事責任(重大な過失致死等)や民事の不法行為責任、製造物責任に基づく請求など複数の法的手段が併存し得ます。事案により使われる法的根拠が異なります。
Q: 被害者は何を立証すればよいですか?
A: 一般には(1)製造物の欠陥が存在したこと、(2)被害(身体・物的損害)が生じたこと、(3)欠陥と損害との因果関係があること、を立証する必要があります。製造者の過失を示す必要はありません(無過失責任)。
A: 一般には(1)製造物の欠陥が存在したこと、(2)被害(身体・物的損害)が生じたこと、(3)欠陥と損害との因果関係があること、を立証する必要があります。製造者の過失を示す必要はありません(無過失責任)。
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