基本情報技術者 2010年 春期 午前(科目A) 問76
問題文
昨年度と今年度の入社試験問題を比較するために、多数の社員に両年度の問題を解答させた。昨年度の問題の得点を軸に、今年度の問題の得点を軸にとって、相関係数と回帰直線を求めた。〔結果〕から分かることはどれか。
〔結果〕
・相関係数は、であった。
・回帰直線の傾きは、であった。
・回帰直線の切片の値は、であった。
選択肢
ア:回帰直線の 切片の値から、今年度の問題の得点が 点の人でも、昨年度の問題では 点程度とれることが分かる。
イ:回帰直線の傾きから、今年度の問題の平均点は、昨年度の問題の平均点の 倍であることが分かる。
ウ:回帰直線の傾きと 切片の値から、今年度の問題は昨年度の問題に比べて得点しやすい傾向にあることが分かる。(正解)
エ:回帰直線の傾きと相関係数の値から、今年度の問題は質が高いことが分かる。
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回帰直線の解釈【午前解説】
正解の理由
選択肢ウが正しい理由は、回帰直線 の傾き と正の 切片 の組合せが、「全体として今年度の得点が昨年度より高めに出る傾向」を示しているためです。傾き は「昨年度の得点が1点上がると,今年度の予測得点は平均で約1.1点上がる」ことを意味し、切片 は「昨年度得点 のときの今年度の予測得点が である」ことを示します。これらから群としては今年度の得点が相対的に高い方向にシフトしている(得点しやすい傾向がある)と解釈できます。ただしこれは集団的な傾向の話であり、個々人の実測値を断定するものではありません。
解法ステップ
- 軸の意味を確認する:横軸 が昨年度得点,縦軸 が今年度得点であることを確認する。
- 傾きの解釈:傾き は単位増加あたりの平均変化量(今年度の増分)を表す。 であれば,昨年度得点に対して今年度得点が相対的に大きく増える傾向がある。
- 切片の解釈:切片 は のときの の予測値(昨年度が0点の人に対する今年度の予測平均)である。個別の観測値や外挿には注意する。
- 相関係数の意味:相関係数 は強い正の線形関係を示し,回帰直線による傾向説明が比較的妥当であることを補強する。
- 選択肢と照合して誤りを除外する:上の解釈と照らし合わせて最も適切な記述を選ぶ。
選択肢別の誤答解説
- ア: 誤り。切片 は「昨年度得点が のときの今年度の予測得点が 」を意味する。文中の「今年度が0点の人でも、昨年度で10点取れる」とする説明は軸を逆に解釈しており間違い。また切片はあくまで回帰式による予測値であり,個々の実測値を断定するものではない(外挿や個人差に注意)。
- イ: 誤り。傾き は「単位当たりの増加量」を表すが,平均点そのものが傾きの単純な倍になるわけではない。回帰直線は を通るため, となり, とは限らない(切片がゼロでない限り比率にはずれがある)。
- ウ: 正しい。傾きが で切片が正であることから,回帰直線による予測は概ね昨年度より今年度の得点が高めに出る方向を示しており,「得点しやすい傾向がある」との記述は妥当である。ただし「傾向」であって個々の断定ではない点は注意する。
- エ: 誤り。相関係数や傾きの値だけで「問題の質が高い」とは言えない。相関は得点間の線形関係の強さを示すにすぎず,問題の難易度・妥当性・妥当なカバレッジなど「質」を評価するためには別の検証(内容の妥当性や項目解析など)が必要である。
よくある誤解
- 切片を個人レベルの実測値と混同する:切片は回帰式による予測値であり,x=0 を観測していない範囲を外挿すると誤った結論になることがある。個々の人が必ずその値を取るわけではない。
- 傾きを平均比と混同する:傾きは「単位変化あたりの平均的な変化」であり,平均点の単純な倍率ではない(切片がゼロでない限り平均点比とは一致しない)。
- 相関=因果や相関=試験の良し悪しと考える:相関はあくまで変数間の線形関連の強さで,試験の質や原因までは示さない。
補足コラム
- 相関係数 はかなり強い正の線形関係を示します。単回帰の場合の決定係数は で,説明変数(昨年度得点)が従属変数(今年度得点)の分散の約64%を説明していることになります。残りの36%はモデル外の誤差やその他要因です。
- 回帰直線の式は一般に 。この直線は必ず点 を通るため, が成り立ちます。切片 がゼロでない場合, と の比は と一致しません。
- 外挿(観測範囲外での予測)や個人差には注意すること。特に が観測範囲外の場合,切片の意味合いは統計的予測にとどまり,現実解釈には慎重さが求められます。
FAQ
Q1: 傾きが1.1なら全員今年の方が点が高いのですか?
A1: いいえ。傾きは平均的な増分を示すだけで,個々人には例外があります。分散や残差を見て個別差を評価する必要があります。
A1: いいえ。傾きは平均的な増分を示すだけで,個々人には例外があります。分散や残差を見て個別差を評価する必要があります。
Q2: 切片が負でも問題ありますか?
A2: 切片が負でも回帰自体は成立しますが, が現実的でない(得点が0になることが想定外)場合や負の予測値が非現実的な場合は外挿を避けるべきです。
A2: 切片が負でも回帰自体は成立しますが, が現実的でない(得点が0になることが想定外)場合や負の予測値が非現実的な場合は外挿を避けるべきです。
Q3: 相関が高ければ試験は公平と言えますか?
A3: いいえ。相関は得点間の一致度を示すにすぎず,公平性・妥当性・信頼性などは別途検討が必要です。
A3: いいえ。相関は得点間の一致度を示すにすぎず,公平性・妥当性・信頼性などは別途検討が必要です。
関連キーワード: 回帰分析、相関係数、切片、傾き、決定係数、外挿、単回帰

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