基本情報技術者 2016年 春期 午前(科目A) 問53
問題文
プロジェクト全体のスケジュールを短縮する技法の一つである“クラッシング”では、メンバの時間外勤務を増やしたり、業務内容に精通したメンバを新たに増員したりする。“クラッシング”を行う際に、優先的に資源を投入すべきスケジュールアクティビティはどれか。
選択肢
ア:業務の難易度が最も高いスケジュールアクティビティ
イ:クリティカルパス上のスケジュールアクティビティ(正解)
ウ:資源が確保できる時期に開始するスケジュールアクティビティ
エ:所要期間を最も長く必要とするスケジュールアクティビティ
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クラッシングによる工数投入優先【午前解説】
正解の理由
正解は イ です。クラッシングは追加リソースや残業で個々のアクティビティの所要期間を短縮し、プロジェクト全体のスケジュールを短縮する技法です。プロジェクト全体の完了日を早めるためには、全体のボトルネックであるクリティカルパス上のアクティビティを短縮する必要があります。クリティカルパス外(フロートが残る)アクティビティを短縮しても、その活動の余裕がある限りプロジェクト全体の終了日は変わりません。したがって資源を優先投入すべきはクリティカルパス上のアクティビティです。
解法ステップ
- ネットワーク図を作成し、各アクティビティの所要期間と論理関係を確認する。
- 早始早終(ES/EF)と遅始遅終(LS/LF)を計算してフロート(余裕)を求める。
- クリティカルパス(フロートがゼロの連鎖)を特定する。
- クリティカルパス上の各アクティビティについて「最短可能期間」と「クラッシュに要する追加コスト(コストスロープ)」を見積もる。
- コストスロープが小さい(費用対効果が高い)順に短縮を施し、短縮後は再度クリティカルパスを計算して必要なら繰り返す。
- コストや品質、メンバ負荷の限界を常に考慮して、最小コストで必要な短縮を実現する。
選択肢別の誤答解説
- ア: 業務の難易度が最も高いスケジュールアクティビティ
→ 高難度だから優先とは限りません。難易度が高くてもフロートがあるなら全体短縮になりませんし、追加人員が必ず効果的とは限りません。 - イ: クリティカルパス上のスケジュールアクティビティ
→ 正解。クリティカルパス上の短縮がプロジェクト全体の短縮に直結します。 - ウ: 資源が確保できる時期に開始するスケジュールアクティビティ
→ 資源確保の都合は実行計画の制約ですが、プロジェクト全体の短縮効果とは直接関係ありません。 - エ: 所要期間を最も長く必要とするスケジュールアクティビティ
→ 長時間のアクティビティが必ずしもクリティカルとは限らないため誤りです。フロートの有無を確認する必要があります。
よくある誤解
- 「所要期間が最も長い作業を短縮すれば効果が大きい」は誤解です。長い作業がクリティカルかどうかで効果が決まります。
- 「資源が確保できる時期に開始する活動を優先」は短期的な実行性を考慮した判断であり、全体短縮とは別問題です。
- 「技術的に難しい作業に人を割けば早くなる」は単純化しすぎです。追加教育や立ち上がりコストで逆効果になることがあります(Brooksの法則にも注意)。
補足コラム
- クラッシングとファストトラッキングの違い:クラッシングはリソースを追加して個々の所要期間を短縮する手法、ファストトラッキングは並行作業を増やして論理関係を変更し短縮する手法です。リスクやコストの性質が異なります。
- コストスロープ(cost slope)の考え方:追加コスト÷短縮時間で算出し、単位短縮あたりのコストが小さい活動からクラッシュするのが経済的です。例:ある作業を1日短縮するのに追加で3万円かかるならコストスロープは3万円/日です。
- 実務上の注意点:追加人員で短縮できる量には上限があり、初期投入には教育時間や管理コストが発生します。過度の残業は生産性低下や品質低下を招くためバランスが重要です。
FAQ
Q1: クリティカルパスが複数あるときはどうする?
A1: すべてのクリティカルパスを考慮し、各パスの短縮効果とコストを比較して最も効率的な組合せでクラッシングします。
A1: すべてのクリティカルパスを考慮し、各パスの短縮効果とコストを比較して最も効率的な組合せでクラッシングします。
Q2: 非クリティカルな長時間作業を短縮しても意味はない?
A2: フロートが残るうちは全体完了日は変わりません。ただし将来のリスク軽減や平準化の観点で短縮する場合はあります。
A2: フロートが残るうちは全体完了日は変わりません。ただし将来のリスク軽減や平準化の観点で短縮する場合はあります。
Q3: クラッシングの上限はどう判断する?
A3: 各アクティビティごとに「クラッシュ可能な最短期間(下限)」があり、それ以上は短縮できません。人的・技術的制約を確認してください。
A3: 各アクティビティごとに「クラッシュ可能な最短期間(下限)」があり、それ以上は短縮できません。人的・技術的制約を確認してください。
Q4: 追加コストよりもスケジュール優先なら?
A4: 経営判断になります。コストを無視してでも納期を守る必要があるか、代替案(外注、範囲変更)がないかを総合的に検討します。
A4: 経営判断になります。コストを無視してでも納期を守る必要があるか、代替案(外注、範囲変更)がないかを総合的に検討します。
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