基本情報技術者 2026年 科目A 問18
問題文
AIの事例として、適切でないものはどれか。
選択肢
ア:制御量を目標値側へフィードバックすることによって両者を比較し、その差によって両者を一致させるような修正動作を行うPID制御のモーターコントローラー(正解)
イ:部屋の広さや形、家具の位置などを学習し、移動のルートを決めて掃除をするロボット
ウ:ヘルプデスク及びコールセンターに代わって、自然言語による質問の意味を推測して返事をするチャットボット
エ:ボードゲームでプロの人間に勝つような、多数の統計データを処理することによって人間に勝るソフトウェア
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AIと自動制御の区別【午前解説】
正解の理由
選択肢のうち、ア がAIの事例として適切でない理由は、アのモーターコントローラーが示すPID制御が「学習・推論・適応的判断」を行う仕組みではなく、あらかじめ定めた比例・積分・微分の演算に基づく決定論的(規則的)なフィードバック制御だからです。PIDは誤差 e(t) に対して
という明確な数式で動作し、自己学習や推論を伴いません。これに対して、選択肢の イ(掃除ロボット)は環境情報の学習や経路計画(SLAMや経路探索)を行い、ウ(チャットボット)は自然言語処理で意味推定を行い、エ(ボードゲームの強いソフト)は大量データや強化学習・探索アルゴリズムで戦略を獲得するため、AIの事例に該当します。
解法ステップ
- 「AIらしさ」のチェック項目を整理する:学習(機械学習)、推論・計画、適応、自然言語理解など。
- 各選択肢についてその仕組みが上のどれに当てはまるかを判定する。
- 学習や推論を伴わない単純な規則・制御のみのものを不適切(AIでない)と判断する。
短縮チェックリスト(問題で使う):
- 学習(新しい経験から性能向上)をするか?
- 統計的推定や自然言語理解を行うか?
- 計画や探索を行うか? → いずれも否なら「AIではない」と判断。
選択肢別の誤答解説
- ア: PID制御はフィードバック制御の代表。ゲイン(Kp, Ki, Kd)に基づく演算で誤差を打ち消すだけで、自己学習や推論は行わない。安定化や追従性能は高いが、それは設計・調整に依存する。よってAIではない。
- イ: 現代の掃除ロボットは部屋の地図作成(SLAM)、障害物検知、経路計画、場合によっては環境の学習(家具配置の学習)を行う。これらは機械学習や推論を含み、AI事例に該当する。
- ウ: チャットボットは自然言語処理(形態素解析、意図推定、応答生成)を行い、意味を推測して返答する。統計的言語モデルやニューラルモデルが用いられるためAIの典型。
- エ: ボードゲームでプロに勝つソフトは、モンテカルロ木探索や深層強化学習など多数の統計的手法・探索アルゴリズムを用いて戦略を学ぶ。AIの代表例。
よくある誤解
- 「自動化=AI」ではない:スイッチや定型の制御・単純オートメーションはAIではなく、規則的処理です。
- 「多数のデータを使う=必ずAI」でもない:大量データの単純集計・表示はAIとは言えません。学習や推論に用いるかがポイントです。
- 「適応的な制御=AI」ではないケースがある:自動調整(PIDゲインの自動チューニング)や古典的な適応制御はAI的要素を持つ場合もありますが、必ずしも機械学習や推論を伴うわけではありません。
補足コラム
- PIDは産業制御で極めて重要な手法であり、設計やチューニングの知見が問われる分野です。AIとは目的や手法が異なりますが、近年は「学習を組み合わせた制御(学習制御、強化学習による制御設計)」という分野が発展しており、これらはAIの技術を活かした新しい制御手法です。
- 歴史的にはファジィ制御やエキスパートシステムが「知能的制御」として紹介されることがあり、試験では用語の定義に注意して区別する必要があります。
簡単なPIDのイメージ(コード例):
# 単純なPIDの離散実装(学習はしない)
Kp, Ki, Kd = 1.0, 0.1, 0.01
prev_error = 0.0
integral = 0.0
def pid_control(setpoint, measurement, dt):
global prev_error, integral
error = setpoint - measurement
integral += error * dt
derivative = (error - prev_error) / dt
u = Kp*error + Ki*integral + Kd*derivative
prev_error = error
return u
FAQ
Q. PIDが自己チューニングすればAIになりますか?
A. 自己チューニングが単なる最適化やルールベースの調整であればAIとは言いにくいです。機械学習やデータに基づく学習アルゴリズムで継続的に性能向上するならAI要素があると判断されます。
Q. 「学習」という語だけでAIと見なしてよいか?
A. 文脈を見てください。統計的学習や経験からモデル改善する仕組みがあればAIに該当しますが、単なる履歴記録や閾値更新などはAIとは異なります。
Q. 出題対策の短い見分け方は?
A. 問題文に「学習」「推定」「自然言語」「計画」「強化学習」などの語があればAI寄りと判断しやすいです。逆に「比例・微分・積分」「フィードバック」などは伝統的制御を連想します。
関連キーワード: PID制御、フィードバック制御、SLAM、経路計画、自然言語処理、強化学習、モンテカルロ木探索、適応制御、ファジィ制御

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