情報セキュリティマネジメント 2016年 春期 午前(科目A) 問37
問題文
スプレッドシートの利用に係るコントロールの監査において把握した、利用者による行為のうち、指摘事項に該当するものはどれか。
選択肢
ア:スプレッドシートに組み込まれたロジックの正確性を、検算によって確認していた。
イ:スプレッドシートに組み込まれたロジックを、業務上の必要に応じて、随時、変更し上書き保存していた。(正解)
ウ:スプレッドシートにパスワードを付した上で、アクセスコントロールが施されたサーバに保管していた。
エ:スプレッドシートを所定のルールに従ってバックアップしていた。
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スプレッドシートの変更管理【情報セキュリティマネジメント解説】
正解の理由
監査で指摘されるのは、利用者がスプレッドシートのロジックを業務の都合で随時変更して上書き保存していた点です。スプレッドシート(表計算ソフト)のロジックを無制限に上書きする行為は、変更管理(Change Management:変更の手順・承認・記録を行う仕組み)を欠くため、誤りや不正の発生・追跡不能を招きます。したがって、選択肢イが指摘事項に該当します。
ポイントの整理
- 目的は「データと計算ロジックの整合性(正確性)」と「変更の追跡可能性」を確保することです。
- 上書き保存だけだと、誰がいつ何をどのように変更したか分からず、監査証跡(audit trail:監査で確認可能な記録)が残りません。
解法ステップ
- 問題の目的を確認する:監査で何を評価するか(整合性・追跡性・責任の所在)。
- 各選択肢が「整合性を守るか」「変更を記録するか」「適切な権限管理があるか」を評価する。
- 管理・監査の観点(変更管理、アクセス制御、バックアップ、検算)と照らし合わせる。
- どれが「欠落している」「不十分」かを選ぶ。
この問題では「随時上書きしている」行為が変更管理の欠如を直接示しているため誤りと判断します。
選択肢別の誤答解説
- ア: スプレッドシートに組み込まれたロジックの正確性を、検算によって確認していた。
- 検算(計算結果を別の方法で確かめること)は良い内部統制です。検算が行われているならロジックの誤りを検出しやすく、監査上の指摘対象にはなりにくいです。
- イ: スプレッドシートに組み込まれたロジックを、業務上の必要に応じて、随時、変更し上書き保存していた。
- 問題となる行為です。変更が随意に行われ、承認や記録がなければ、誤りや不正の原因になり、監査で指摘されます。
- ウ: スプレッドシートにパスワードを付した上で、アクセスコントロールが施されたサーバに保管していた。
- アクセスコントロール(Access Control:誰が何をできるかを制御する仕組み)やサーバ保管は良好な管理です。これ自体は指摘事項にはなりにくいです。ただし、パスワード共有やログ記録の欠如があれば別問題になります。
- エ: スプレッドシートを所定のルールに従ってバックアップしていた。
- バックアップ(データの複製保管)は可用性・復旧のために重要です。ルール通りなら監査上の評価は高いです。ただしバックアップだけでは変更管理の問題は解決しません。
よくある誤解
- 「バックアップがあれば上書きしても問題ない」
- バックアップはデータ復旧には有効ですが、誰がどんな意図で変更したかを説明する証拠にはなりません。監査は変更の妥当性や承認プロセスも評価します。
- 「パスワード保護=完全な安全」
- パスワードは基本的な保護策ですが、共有パスワードやログ未記録だと責任の所在が不明になります。アクセス制御と監査ログが必要です。
- 「検算をしているなら何度でも修正してよい」
- 検算は誤り検出に有効ですが、変更の承認・バージョン管理がないと前提条件(誰がいつどう変えたか)が不明になり、運用や監査で問題になります。
補足コラム
実務での運用イメージ(簡潔)
- 所有者を決める:スプレッドシートごとに「オーナー(責任者)」を明確にします。
- 変更申請と承認:変更は申請フォームで要求し、テスト後に承認してから反映します。
- バージョン管理:ファイル名にバージョンを付ける、あるいはバージョン履歴を持つ共有ストレージを使います。これで「いつ誰が何を変えたか」が分かります。
- フォーミュラロック:重要な計算式はロックして、編集できる人を限定します。
- 監査ログ:アクセスや変更のログを残せる場所で保管します。監査時に説明できることが重要です。
導入可能なツール例(社内で使いやすい順)
- 共同作業ツールのバージョン管理機能(Google スプレッドシート等)
- 社内のファイルサーバ(バージョン履歴・アクセスログを有効に)
- 専用のワークフローツールで変更申請を管理
これらは、総務・人事・営業などIT部門以外でも実行可能な運用です。
FAQ
Q1: 小さな修正なら上書きしても良いですか?
A1: 小さくても、業務に影響するロジックなら必ず変更記録と承認を残してください。誰でも戻せる状態と説明責任が必要です。
A1: 小さくても、業務に影響するロジックなら必ず変更記録と承認を残してください。誰でも戻せる状態と説明責任が必要です。
Q2: 既に何度か上書きしてしまった場合は?
A2: まず現在の状態を保存(別名で複製)。その後、変更履歴を可能な限り再構築し、今後は変更管理手順を導入します。監査には経緯を説明できるようにします。
A2: まず現在の状態を保存(別名で複製)。その後、変更履歴を可能な限り再構築し、今後は変更管理手順を導入します。監査には経緯を説明できるようにします。
Q3: パスワードとバックアップは無意味ですか?
A3: 無意味ではありません。これらは必要条件です。ただし、変更管理や承認、記録と組み合わせて初めて十分な管理になります。
A3: 無意味ではありません。これらは必要条件です。ただし、変更管理や承認、記録と組み合わせて初めて十分な管理になります。
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